19571115-07

What Is There To Say (Duke - Harburg)
(5分57秒)



【この曲、この演奏】

 バーノン・デュークの作品中、比較的地味な存在の曲ですが、ロリンズの上手い節回しとソニクラの見事なバッキングを聴かせるバラッド演奏が印象深い曲です。(資料14)

 このスタンダードの演奏記録は、コルトレーンは本セッションだけ(資料06)でありますが、ガーランドは1961年にジャズランドのセッションでトリオ演奏でこの曲を取り上げています。

 美しいバラッドを美しいガーランドのピアノが耕し、そこにコルトレーンとバードが魂を植え、そして最後にその魂をピアノが磨き上げる、そんなドラマを味わえる演奏です。



【エピソード、ガレスピーのビッグバンド時代の練習】

 コルトレーンは楽旅中のほとんどを練習に充てていた。ホテルの部屋やバスの後部座席で練習に余念がなかった。リードを変え、マウスピースを調整し、指使いを変えるといったぐあいで、自分の頭の中には聴こえているが、現実にはまだ一度もサックスから出したことのない新しいサウンドを常に追求していた。

 ジェス・パウエルはコルトレーンが四六時中サックスを手放さないのを不思議に思い、その理由を聞いてみた。

「納得できないからさ」

「何が納得できないんだ、君のアルトはすばらしい音を出しているじゃないか、ぼくにはいいサウンドだと思えるがね」

「君にはね。だが残念なことに君はぼくではない」

「そりゃそうだ。だが君だってバードじゃないぜ」

またある場面ではコルトレーンがジェスに、彼がホーキンスのようなすばらしい音を出すのが羨ましくて、聞いてみた。

「ジェス、どうやったら君みたいに大きな美しい音が出せるんだろうな」

「ドアのかげで練習するといいんだ」

ジェスのこの言葉を目を大きくして眉を吊り上げていたコルトレーンに、ジェスは続けて言った。

「サックスのベル部分をドアに向けて、その後ろに立ったままの姿勢で吹くんだ。そうすると、音が頭の方にはね返ってくるんだよ。だからサックスを吹きながら、自分が演奏している曲を聴くことができるというわけだ」

 コルトレーンはあたりの響き渡る話声のような美しい音色を求めて、ジェスの助言に従い、練習を続けていた。(資料01)


【ついでにフォト】

tp08001-032

2008年、みなとみらい


(2019年10月7日掲載)