I Love You (Cole Porter) (5分30秒)
【この曲、この演奏】
ミュージカル「メキシカン・ハイライド」の中の曲で、1944年にビング・グロスビーが大ヒットさせ、ジョー・スタッフォードもヒットさせた曲であります。(資料14)
ここでのコルトレーンの演奏はこの曲の名演とされていますが、資料06ではコルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。
さて演奏ですが、ラテン調にしてテンポを速めてスィング感ある演奏となっています。ここでのコルトレーンの高速プレイは、聴きごたえあるものであります。自分だけがソリストでも、一線級のジャズを繰り広げられることを示した演奏です。
【エピソード、チャーリー・パーカー】
パーカーとの出会いについて、資料03には資料01とは違うエピソードが書かれている。先ずはベニー・ゴルソンの回想は、次の通りだ。
「ジョンはすぐそばにいて、すべてを吸収しようとしていた。ホールのなかでは、人々が立ち上がり、叫び声を上げ、手を叩き、足で床を踏み鳴らしていた。自分がサックス奏者で、それまでこんな音楽を聴いたことがなかったと想像すれば、わたしたちがそんな気持ちだったか分かるだろう」
またライブ後のエピソードは次の通りだ。コルトレーンとゴルソンは移動する憧れのヒーローと、行を共にした。そこでパーカーのサックス・ケースを二人で持たせてもらい、三人並んで歩いていた。ゴルソンはパーカーに質問をいくつもしたが、コルトレーンは明らかに気後れしていた。
1947年にLAでコルトレーンがパーカーに会った際には、コルトレーンのことは覚えていなかったとのことだ。
このように資料01と03で書かれているエピソードには違いがあるのだが、決定的な違いは日付である。資料01は除隊後の出来事、つまり1946年の後半の話となっている。しかし資料03ではそれは、1945年6月5日のこととされている。
私は時期については資料01が正しいと思う。コルトレーンがゴルソンと行動を共にしていたのは、除隊後のことである。
では何故に資料03では1945年6月5日としているかだが、資料08をはじめとする資料では、ガレスピー・バンドでパーカーがフィラデルフィアで演奏した記録があり、それは1945年6月5日である。しかしながら多くの演奏記録資料には演奏記録の全てが掲載されているわけではなく、ましてやこの時期の記録となればなおさらのことである。
資料03はこのエピソードを聞き、そしてその時期を演奏記録から特定しようとしたことにより、そんな記載になったと、私は考える。
【ついでにフォト】
2007年、アムステルダム
(2019年7月29日掲載)