19570625-04

Blues for Tomorrow (Gigi Gryce)
                             (13分32秒)



【この曲、この演奏】

 アルト・サックス奏者のジジ・グライス作ったブルース・ナンバーで、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。資料07によればこの曲は、「Club dues」との曲名もあるそうです。

 ミドル・テンポでの楽しげであり寂しげでもあるこの曲を、管楽器四人での演奏でテーマを演奏して始まります。ソロの先発はジジ・グライシスで滑らかで艶々の響き、続くコープランドは無難に始まり無理に盛り上げていき、次がコルトレーンのソロとなります。確かにコルトレーンの演奏なのですが、「主人が去った後でなんで演奏するの?」との気持ちが演奏に出ております。続くのはホーキンスですが、こちらは貫禄が漂う演奏です。「ギャラ分の仕事はしますよ、キープニュースさま」との心意気を感じる演奏です。この1957年6月での、コルトレーンとホーキンスの人間の器の違いが分かるものです。

 ウェアとブレイキーの長すぎる演奏を挟んで、管楽器四人で4小節交換を回していきますが、ここでもホーキンスの存在が光っています。

 キープニュースがいう「相当に強力な演奏」からはかけ離れた印象を私は持ちましたが、違う角度から見れば興味深い演奏といえます。

 この演奏はアムニバス・アルバムに収録されて、1958年に発売されました。



【エピソード、本セッション、その2】

 このセッションの主であるモンクが去った後に、残ったメンバーで演奏された「Blues for Tomorrow」について、資料18と資料19からプロデューサーのオリン・キープニュースの文章を引用して紹介する。

 この時点(モンクがスタジオを去った時点)で私は録音予定を切り換えた。いずれにせよバンドにはギャラを払わねばならないことに気づいたからで、私はその六人にピアノレスのブルースを演奏するようリクエストし、のちにその曲は「ブルース・フォー・トゥモロウ」というタイトルのアンソロジー・アルバムに収録され発売された。これは相当に強力な演奏であり、モンクのために設定された録音からの大きな収穫でもあることから、本コレクション(CD15枚組)への収録にも十分に根拠があると思われる。(1988年の資料18)

 モンクは文字どおり機材用のカートに乗って部屋から運び出された。そして残されたわたしは、何も完成させられなかったとしてもその時間分のギャラを払わなくてはならない6人のミュージシャンと問題を解決する必要に迫られたのである。その昔は、スタジオにいれば何らかのアイデアが閃いたものだ。このときは、余った時間でブルースを演奏してもらうことにした。これなら、少なくとも何かのアルバムで発表できると考えたのだ。ジジがうまい具合にブルースの曲を持ってきていて、それを急いでみんなに説明してくれた。13分半におよぶ興味深いテイクを録音したところで、わたしはその曲に「ブルース・フォー・トゥモロウ」とタイトルをつけた。このタイトルはあくまで一般的な将来の意味で、翌日も予定されているレコーディングについてわたしが抱いている恐怖心を表したものではない。そして、これは最終的にさまざまなリーダーたちが残したセッションから選んで編集したアルバムのタイトル・トラックになったのである。これは充実したパフォーマンスであり、お蔵入りさせておくには値しない。(2006年の資料19)


【ついでにフォト】

tp08050-047

2008年 みなとみらい


(2022年1月19日掲載)