Crepuscule with Nellie
(Thelonious Monk) (テイク1 4分31秒)
【この曲、この演奏】
クレパスキュールとは黄昏時のこと、そしてネリーとはモンクの夫人の名前、深い意味があるはずのこの曲ですが、資料08によればモンクにとってこのセッションが初演となります。コルトレーンのこの曲の演奏として資料07にある記録では、この翌日のスタジオ・セッションのほかに、1958年9月11日のモンクとのファオヴ・スポットがありますが、1957年のファイヴ・スポットで何度も演奏されていたことだと思います。
-01 take 1(4分31秒)
静かな流れの中に優しさを感じる演奏です。前半はピアノ・トリオ、後半はそこにブラス陣が色付けで加わっています。これでOKテイクとなっても十分な内容です。この演奏は1988年に世に出ました。
-02 take 2(4分40秒)
スタジオ内の会話の後に演奏が始まりますが、モンクに少しの緊張感の弱まりを感じます。スタジオ内ではモンクの不調をはっきりと感じたとみえて、ブレイキーがモンクを鼓舞するような演奏となります。既に演奏を中断しても不思議ではありませんが、後半にブラス陣がテイク1と同様に入り、演奏は続きました。このテイクは2006年に世に出ました。
-03 take 3(51秒)
ここでは崩壊したモンクの演奏があり、眠っているかの場面もあり、早々と演奏は中断となりました。これは1988年に世に出ています。
【エピソード、本セッション その1】
この日と翌日の26日の二日間にかけて、アルバム「モンクス・ミュージック」のセッションが用意された。まず「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」を収録を試みたが中断となった。資料18のプロデューサーのオリン・キープニュースの文章からその辺りの様子を引用する。
この夜には、何かを完成させるだけの気持ちがモンクにはなかったである。彼はテナー・サックスの過去と未来を体現した二人の親しい仲間、コールマン・ホーキンスとジョン・コルトレーンを起用する、4本のホーンによる素晴らしいコンセプトの編曲を何曲か書き上げていた。
彼はその音楽の準備のために幾日か眠っていなかったが、2日連続の予定を立てていたセッションの初日には、時間通りにスタジオに到着した。メンバーはほとんど揃っていたが、アート・ブレイキーが姿を見せたのは、1時間近くも経ってからだった。その頃にはもうモンクの神経はぎりぎりのところまできていたが、無謀にも彼は新しい作品「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」の演奏に突入した。
ファースト・テイクは、全く不首尾どころではないのである。バンドはためらいがちではあるが、よく曲を理解しているようであり、モンクはエネルギーに満ちている。
しかし、そこからすぐに下り坂に入ってしまった。
【ついでにフォト】
2007年 みなとみらい
(2022年1月18日掲載)