One By One (Mal Waldron) (9分41秒)
【この曲、この演奏】
マル作のこの曲は、コルトレーンも作者マルも演奏記録は本セッションだけです。(資料06、08)
そしてこの曲はアレンジを含めてマルが手掛けたもので、メロディだけを取り上げて語るものでないと思います。私にはマル節による、「モールス信号のような」とよく言われる展開により、不思議な雰囲気を出しているブルースです。
資料11では、「テーマは、最初、一時に一つのパートだけが進み、やがて3本全部のホーンによって対位法で奏でられる」と書かれています。流石に専門家は私にような思いつきを語るのではなく、しっかりとしたことを書くものです。
コルトレーンのプレスティッジ12度目のセッションの前半最後の本演奏は、マルの存在感により3本のホーンが独自の輝きとなるもので、シュリーマンとシハブに続いてのコルトレーンのソロは天啓をうたれたかのようなものです。
【エピソード、軍隊バンドでのレコーディング】
コルトレーンの録音記録で音源が残っているもので最初のものは、1946年7月13日のハワイでの海軍バンドでの演奏である。ヴォーカルを含めて6人での演奏で、8曲演奏されている。(資料06)
資料12にはその際の写真が掲載されており、まだ細身のコルトレーンはサングラス姿でアルトサックスを持っている。その写真の解説は次のとおりである。
海軍除隊記念演奏、極秘録音
46年7月13日(土)、ハワイ《アームドフォース・ラジオ・ステーション》で録音中の6人。陸軍、海軍、白人、黒人混成バンドで、除隊記念に8曲をレコーディング。
60年になるまで、軍隊でも白人と黒人の混成バンドは正式に認められていなかったので、これは非公式なセッションで貴重な記録である。中央でアルトサックスを持ち、サングラスを掛けているのがコルトレーン。タムタムもバスタムも無く、バスドラは現在のスタンダードよりかなり大きめである。
コルトレーンは翌月に除隊となった。(資料01)
【ついでにフォト】
2005年、香港
(2019年6月29日掲載)