19570420-06

The Cat Walk (Teddy Charles)  (7分13秒)


【この曲、この演奏】

 キャットウォークと言えば、ファッションショーでモデルさんが独特の歩き方をする、あの長い舞台のことです。そして他にも、工場や劇場、そしてダムや貨物機などにある狭い通路を指す言葉のようです。猫が通れるだけの狭い通路、そんなことなのでしょう。

 ジャズでキャットウォークと言えばドナルド・バードのBN作品となりますが、本セッションにテディ・チャールズ作の曲として収録されています。

 テディ・チャールズのイメージからは外れますが、実にムーディな曲です。その中での各ソロは、どのように振る舞うか迷っている演奏です。資料11はこのセッション全体について、「もっとコード・チェンジになじむ時間があったなら、ソロイストの演奏は一段と違ったであろう」と評しています。これはここでの演奏には当てはまるものだと、思いました。

 曲自体は舞台をゆったりと歩くモデルさんの優雅な動きをイメージしたのでしょうけれど、狭い通路をギリギリの思いで歩く様子が欲しかったなと感じました。



【エピソード、家で練習】

 「ソニー・ロリンズは橋の上で練習し、私は公園の中で練習をしたものだが、コルトレーンはいつも自分の部屋で練習していた」ハンク・モブレー

 フィラデルフィアにいた1943年のある晩の、アパートでのコルトレーンの練習は次のようなものだった。

 夜食で腹ごしらえした後に、教則本を前にしていくつかのコードの正確な演奏練習を始めようとしていた。リードがムラなく平らに削れたかを確かめ、それを締め金でマウスピースに固定する。そして綺麗に磨き上げたアルト・サックスを首紐にかけ、サックスを右に少し傾けて下げ、右の親指を指のせにかけ、他の指をボタンに当てた。こうして練習を始めるのだが、ときおり奇妙な音が出ることがあった。中古のアルトの限界と思うこともあれば、リードの削り直しを行うこともあった。こうしてアパートで練習する夜を続け、やがて自分が敬愛してやまないホッジスの流れるような美しい音に近づいて行くのがわかった。

 これまでの短い人生において、まるで女を抱きしめるような手つきでサックスを腕にだき吹奏に熱中しているときほど、大きな開放感を覚えることはなかった。

 自分が創造している音楽にしても、今のところは自分だけの楽しみなのである。

(以上全て資料01)


【ついでにフォト】

19570420-06

2006年、香港


(2019年6月11日掲載)