Anatomy (Mal Waldron) (11分54秒)
【この曲、この演奏】
タイトル名は、解剖、解剖学、人体の構造との意味であります。また(物事の)詳細な分析との意味もあります。作者であるマルが意図したことは、何となく想像できるようであり、私の想像を超える意味もあるのかなと思います。
コルトレーンはこの曲を、このセッションから2ヶ月後にプレスティッジのセッションで演奏しています。それはコルトレーンとクイニシェットのコ・リーダー作品として発売されており、そこにはマルも参加しています。(資料06)
またマルのこの曲の演奏も、コルトレーンとの2回だけです。(資料08)
スウィングしながら燃え上がっていくジャズの醍醐味を味わえるこの曲は、資料11によれば「オール・ザ・シングス・ユー・アー」のコード・チェンジに手を加えたものです。
ソロ順は次の通りです。(資料09)
バレル、チェンバースのアルコ、マルとリズム陣が先に登場します。その後はヤング、ジャスパー、シュリーマン、コルトレーンと続きます。そして更にトランペットのバトル、そしてテナー・サックスのバトルと続いて行きます。
各楽器の音色と個人の特徴を際立たせる展開が、胸をすく演奏です。この辺りは、音楽監督の立場でこのセッションに参加したマル(資料11)のセンスなのでしょう。
そして私がニヤッとしたのは、最後のテナー二人の四小節交換でした。ジャスパーがコルトレーンに仕掛けているように思え、それによって燃えていく両者の姿が印象に残りました。
【エピソード、このセッション】
ここで掲載しているセッション内容を見れば、プレスティッジお得意寄せ集めセッションの後に、何故にアート・テイラーのセッションがあったのかとの疑問になる。
最初の寄せ集めセッションのメンバーは、トランペット系にウェブスター・ヤングにアイドリース・シュリーマン、テナー・サックスのコルトレーンとボビー・ジャスパー、ピアノはマルでギターはバレル、そこにチェンバースとアートテイラーだ。
そしてアート・テイラーのセッションは、管楽器3人とギターが抜けて、ピアノはガーランドになっている。ピアノがマルのままならば、理解できるもの。
資料11に、その答えがある。
毎週金曜日にヴァンゲル・スタジオを押さえているプレスティッジは、この日に二つのレコーディングを用意したのであった。一つは寄せ集めセッション、もう一つはガーランド・トリオでのレコーディングだった。そして疲れた寄せ集め陣の中でも、疲れを知らないチェンバースとテイラーを、そのままガーランド・トリオに入れたのだ。8曲録音し、6曲が「ガーランズ・ピアノ(LP7086)」という作品で発売され、人気作品となって行った。
そんな状況で、何故だかコルトレーンがスタジオに残っていて、では1曲「C.T.A.」となったようだ。その1曲はテイラーのリーダー盤「テイラーズ・ウェイラーズ(LP7117)」に収録された。しかしながらプレスティッジは数年後にこの曲を、ガーランドの「ディグ・イット(LP7229)」にも入れて発売した。資料によってはこの「C.T.A.」をガーランド・セッションとしているものもあるが、それはこの理由によるものだ。
なおウェブスター・ヤングとコルトレーンの共演記録は、資料06によれば本セッションだけである。
【ついでにフォト】
2007年、アムステルダム
(2019年4月27日掲載)