Sweet Sue, Just You
(Will J. Harris - Victor Young)
【この曲、この演奏】
資料14には作者が同じで曲名が「Sweet Sue」とのものがあります。これが同一曲でああるならば、「スイング時代はサッチモやジャンゴ・ラインハルト、テディ・ウィルソンと名手がこぞって名演を残しているが、モダン期に入ってからは人気薄」(資料14)と紹介されている曲です。
コルトレーンのこの曲の演奏記録は本セッションだけであり(資料07)、それはマイルスも同様(資料08)であります。
このセッションでは合計11回、この曲を演奏しています。その最後のものが本テイクとなり、別項で触れますが1956年10月に発売されています。それまでの10テイクの中で3つのテイクが2000年に世に出ており、ここではそれらの演奏について取り上げます。
-04 take 1 (4分20秒)
ミディアム・テンポでマイルスのミュート・トランペットが短くテーマを吹き、そのままアドリブ・パートに入ります。ソロはコルトレーンとガーランドへと続き、再びマイルスが登場し長めの後テーマの演奏となります。マイルスのミュート・トランペットは熱を抑えようとのもので、コルトレーンはサックスの豊かな響きを出そうとしている演奏なのが、印象深いものです。
-07 take 4 (1分56秒)
2000年に発売されたCD6枚組のブックレットには、「FALSE START WITH DISCUSSION BY LEONARD BERNSTEIN & MILES DAVIS」とあります。内容はこの通りのものです。最初の25秒間はスタジオ内の会話であり、バーンスタインが要望事項を伝え、ドラムの一音がある中で、マイルスのかすれ声が応えていくとのものです。続くのは23秒間の演奏であり、マイルスのトランペットが違う方向を向く演奏をして、中断となります。そして1分8秒のスタジオ内会話では、バーンスタインがメロディを口ずさみながら要望事項を伝えていき、マイルスが独特の声で返答するとの内容です。コルトレーンはサックスも声も出していないようです。
-11 take 8 (3分28秒)
演奏構成はテイク1と同様ですが、テンポを早めています。マイルスのミュート・トランペットはテイク1より熱を加えたもので、コルトレーンのテナー・サックスは彼のこの時期の響きとなっています。
【エピソード、Sweet Sue, Just You について】
この日を含めて三日間に渡り入念にレコーディングされた演奏は、1957年3月4日にアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」として発売された。発売まで時間がかかっているのは、マイルスとプレスティッジとの契約が1957年2月7日までだったことによる。
しかしながら3度目のセッション(1956年9月10日)で演奏された「Sweet Sue, Just You」は、1956年10月15日にコロンビアから発売された。これはマイルスのリーダー・アルバムではなく、Leonard Berstein 監修の「What Is Jazz?」というアルバムに収録されて発売されたのであった。これなら、マイルスとプレスティッジとの契約に抵触しなかったのであろう。
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい、ラ・マシンによるクモ
(2021年12月26日掲載)