2005年4月8日掲載
One For All          Blueslike
Criss  Cross原盤    2004年12月録音

 このコーナーでは7枚目の登場となるワン・フォー・オールの、クリスクロスからの新譜です。新譜と言っても昨年9月発売ですので、少し鮮度が落ちておりますね。もはや黄金シクステットといって良いグループですが、このメンバーならば少なくても及第点の作品は必ず残すはず。この盤ならではの彼らが存在することを願って、聴きます。全8曲ですが、最後にコルトレーンの2曲、「naima」と「giant steps」が収録されています。

20050408

 軽い歌心が印象に残る作品です。特にデイヴィスのトロンボーンが印象的。アレキサンダーのテナーや、ロトンディのペットと比べて、特に大きなスペースがトロンボーンに与えられているわくでないけれど、トロンボーンが印象に残った作品です。

 例えば、多くの歌手が取上げている『we'll be together again』では、トロンボーンがメロディを吹き始め、フリューゲルホーンとサックスがそれに続く展開。またアドリブでは、フリューゲルホーンが先発しトロンボーン、そしてベースを挟んでテナーに続く展開です。この中で、トロンボーンの優しい音色が他の管にも乗り移っているような優しさが、聴き取れます。この優しさは全体に行き渡っているのです。それは、エネルギッシュな展開になりそうなテーマとアレンジの『yasashiku』にも同様であります。

 そんなこの作品も、後はコルトレーンの2曲を残すだけになった時に、「このまま終わってくれ」と思いました。どう考えてもこのコルトレーン2曲には、熱き思いを重厚に込めてしまうと思ったからです。しかし、そんな思いは不要でした。見事に優しい歌心で、この2曲を演奏しております。トロンボーンが効いた1枚です。