2005年10月3日掲載
Eric Alexander     Sunday In New York
Venus原盤             2005年3月録音

 ヴィーナス移籍第一弾の「ジェントル・バラッズ」は、SJ紙上では大絶賛された作品でした。バラッド集という今のアレキサンダーの勢いからすれば頷ける企画であり、アレキサンダーの演奏もその期待に応えたものでしたが、力が入り過ぎていたとの感がありました。

 今回のヴィーナス第2弾は、スタンダード集。ピアノはジョン・ヒックスに替わっております。

20051003

 堂々とした吹きっぷりの、ワン・ホーン・クァルテットの熱い作品の登場といったとこでしょうか。ジャズではあまり馴染みのないタイトル曲を取り上げるところなどは、センスが光っております。

 児山紀芳氏が解説を書いておりますが、3曲目の『dearlybeloved』のところで、コルトレーンやロリンズも演奏した曲と書いております。アレキサンダーが演奏するアップ・テンポの演奏を聴きながら、さてコルトレーンが演奏したこの曲とは、なんぞやの気分になりました。ここでアレキサンダーが取上げているこの曲は、ジェローム・カーン作のもので、時折り耳にする曲であります。リバーサイドへ吹き込んだロリンズやモンゴメリーの演奏、そしてブルー・ノートへ吹き込んだスタンリー・タレンタインのそれが、有名なとこです。

 コルトレーンも確かに黄金クァルテットでもって、1995年にインパルス「サン・シップ」へのセッションで吹き込んでいます。しかしこれはコルトレーンのオリジナル曲で、カーンのそれとは同名異曲。もしかしたらカーンのもコルトレーンが吹き込んでいるのかと思い、調べましたが、調べ損でした。

 児山紀芳氏の勘違いに振り回されて、この作品の2回目聴きを終えましたが、アレキサンダーのテナー・サックスは、コルトレーンやロリンズ,そしてタレンタインを吸収しながら、今や独自の世界を築いているなと感じた次第です。個人的にはロリンズの味わいが加われば、さらに良いのではと思いました。