2001年6月14日掲載
Charles Lloyd      The Water Is Wide
ECM原盤            1999年12月録音

 昨年の夏に新宿ユニオンで入荷ばかりのこの作品を買ったのですが、引越準備のドサクサでどこかに迷い込んでしまったのです。その間にドンドン評価が高くなるし、いろんな賞を取るしで、複雑な思いをしていたのですが、4月に帰国した際に実家の隅からひょっこり出てきまして、ようやく聴ける様になった次第です。

 チャールス・ロイドは、アルトからテナーに持ち替えて1961年にチコ・ハミルトンのバンドに加わり、世間の注目を集め始めました。その後いくつかの有名ミュージュシャンのバンドに加わった後に、自身のバンドを1966年に結成し、「フォレスト・フラワー」という大ヒット作品を世に出し、名声を得たお方です。その後ロックに浮気していたりしたのですが、ペトルチアーニとの出会いによって1980年代に再びジャズ・シーンに戻って来ました。

 しかしながら、僕がこの作品が新譜コーナーに並んでいて迷いもなく購入したのはピアノのブラッド・メルドーが参加しているからだし、大方の人の購入動機も僕と同じでしょうね。この吹込み時期は、彼の代表作であり名盤と勝手に決めつけている「places」の録音の前月に当たりますよ。ギターにジョン・アバークロンビーが参加しているクィンテット編成での作品です。

20010614

 牧歌的に響き渡るロイドのテナーを、ブラッシュ・ワークで見事にサポートするヒギンズのドラム。前面に出ることは無いのだが、ロイドとの親密な関係であるかのようなバッキングで見事な自己主張をしています。メルドーのピアノは、普段の猫背から背筋を伸ばした演奏になっており、微笑ましいですよ。

 前半でのゆったりした雰囲気を楽しみながら、この録音から1年半後の今年5月3日に死去したヒギンズの素晴らしさに感涙する1枚です。