Pristine (take 9)
(John Coltrane)
(5分38秒)
【この曲、この演奏】
ビッグバンドで7曲を収録した後に、バードとコルトレーンを残してのクインテットで2曲を収録しました。最初の演奏となるこの曲は、コルトレーン作のものです。
コルトレーンのこの曲の演奏記録はこのセッションだけが記録としてはありますが、演奏したらしい情報としては1つあります。それはケニー・ドーハム・クインテットでのライブで、Armory というNYCのハーレムにある場所で1959年3月頃に行われたものです。ピアノ奏者として参加していたシダー・ウォルトンが、ブルーノート大阪に出演中の1991年7月4日に、藤岡氏のインタヴューでこの情報があったとのことです。(資料07)
曲は早いテンポで決めるハード・バップであり、よく耳にするパターンのものです。しかしその演奏は熱いものです。ビショップの重量感あるピアノから始まり、バードのトランペットが印象に残るテーマとなります。ソロはコルトレーン、バード、ビショップと続いていき、3人とも水を得た魚のように演奏しています。
コルトレーンにとって修行時代を過ごしたビッグバンドですが、そこではソロを取ることはありませんでした。ソロを取るミュージシャン、プロと呼べるミュージシャンになってからのコルトレーンは、コンボでの活動ばかりでここまで来ました。この日のセッションで久しぶりのビッグバンドで、曲によてはソロをとりながら演奏してきたコルトレーンですが、やはりコンボでの演奏がこの時のコルトレーンにはあっていたのでしょう。それまでのビッグバンドでの演奏とは姿を変えたコルトレーンが、この曲の演奏におりました。
さてこの9回目の演奏でOKとなったこの曲の収録ですが、それまでに最後まで演奏したテイクが3つありますので、これについて触れておきます。
-38.39 (take 1&2)(8秒 + 7分10秒)
ビショップの数音で終わるものが最初にありますので、これがテイク1なのでしょう。その後に7分10秒の演奏がありますが、荒削りが魅力ながらも、全体の確認をした演奏といった内容です。3人のソロにも、まだまだ気持が入ったものではありません。
-43 (take 6)(8分42秒)
34秒のスタジオ内トークの後に、8分8秒の演奏となります。テイク2と比べれば息が合ってきた演奏であり、ハードバップの魅力がある演奏と言えます。確かにもう少しと思う部分もあるのですが、まだまだ演奏を続けて行ったのは、本テイクとなるテイク9よりも2分半も長い演奏時間が理由なのかも知れません。
-45 (take 8) (6分6秒)
7秒のスタジオ内トークの後に、5分59秒の演奏となります。各パートのつながりにぎこちなさがある演奏で、また各ソロももっと良くなると思わせる演奏内容です。
【エピソード、メンバーとの共演歴、その3】
このセッションに参加しているベース奏者のウェンデル・マーシャルとコルトレーンの共演歴は、資料07によれば本セッションだけである。
新・世界ジャズ人名辞典によればマーシャルは1920年にセントルイスに生まれ、従兄のジミー・ブラントからベースの手ほどきを受け、カレッジ在学中の1942年からライオネル・ハンプトン楽団でプロ活動を始めた。3年間の兵役を終えてすぐプロ活動を始め、エリントン楽団ので活躍は有名なところである。1950年台後半はブレイキーやドナルド・バードのバンドで活動し、1960年台からはミュージカルでのスタジオ・ワークが活動の主となったとのことだ。
この1950年台後半のマーシャルの活動はサヴォイ・レーベルが主だったとのことだが、コルトレーンとの接点はこの1957年末のベツレヘムでのセッションだけとなった。
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい
(2022年3月26日掲載)