The Kiss of No Return (take 6)
(Salaam – Gambel)
(5分28秒)
【この曲、この演奏】
この曲は、ジミー・ランスフォード、ベニー・カーター、ラッキー・ミリンダーなどのビッグ・バンドでトランペットを吹いていたチーフィー・サラームと、彼の協力者チャールズ・ギャンベルの書いたバラードです。(Art Blakey’s Big Band国内版解説より)
コルトレーンの演奏記録は、本セッションだけです。
さて演奏ですが、甘い恋を描きながらも波乱の展開も微かに想像させるような演奏となっています。何と言ってもサヒブ・シバブのアルト・サックスが、その悩ましいフレージングで、ここでの主役となっています。コルトレーンのソロはありません。
さてこのOKテイクの前には5回の演奏があり、その中の2回は最後まで演奏されていますので、簡単にここで触れておきます。
-10 (take 1) (6分1秒)
本テイクと比べて、一つにまとまっていない演奏と言えます。サヒブ・シバブのアルトも本テイクで聴ける暖かみが薄く、またトランペットとトロンボーンのソロも浮いた存在と感じました。構成は本テイクと同じであり、また演奏時間は5分29秒と、これも本テイクと同じです。ここでは演奏の前後にスタジオ内トークが入っています。
-14 (take 4&5) (6分13秒)
1994年初びのCD2枚組「The Bethlehem Years: John Coltrane」には「take 5」とされているトラックに、テイク4に当たるスタジオ内トークと楽器の音出し(リハーサルというのか?)が48秒収録されています。
テイク5はキチンとした演奏であり、構成と演奏時間(5分25秒)は本テイクとほぼ同じであります。比較で言うならば、テイク1よりも格段の進歩、そして本テイクのテイク6よりも過剰演出の演奏と言えます。
この曲の3つの演奏において、コルトレーンはソロを取っていません。しかしながら既に自分のリーダー・セッションを行うようになったコルトレーンには、ここでのビッグバンドにおける演奏の仕上げ方に、大いに勉強になるものがあったのかなと、私は感じています。
【エピソード、メンバーとの共演歴、その1】
トロンボーンの演奏と共に、このセッションではアレンジでも力を発揮しているメルバ・リストンであるが、コルトレーンとの共演歴は資料07によれば本セッションだけである。多くのビッグバンドで活動してきたメルバ・リストンはガレスピー楽団でも活動していたことがあるため、コルトレーンとの何らかの関わりがあったかもしれない。
同じくこのセッションでトロンボーンを吹いているジミー・クリーブランドは、ライオネル・ハンプトン楽団での活動などがあり、1955年のダウンビート誌国際批評家投票で新人の部の首位となった。資料07によれば彼とコルトレーンとの共演は、本セッションの他には1959年4月2日のマイルスとギル・エヴァンスのTVショウがあるだけである。
(以上は新・世界ジャズ人名辞典を参照した)
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい
(2022年3月21日掲載)