19661111-05

My Favorite Things
(R.Rodgers – O.Hammerstein)
(23分12秒)




【この曲、この演奏】
 この時期のコルトレーン・バンドのライヴ定番曲を並べたこの日なので、最後にこの曲の登場となるのも当然のことでしょう。

 前曲からの続きでソニー・ジョンソンのベース独奏となり、3分半を超えてピッチカートで演奏しています。ギャリソンと比べますと、広がりを意識し、強弱をつけた演奏になっています。

 続いてメンバーが加わり、コルトレーンのソプラノ・サックスでの3分弱のテーマ演奏となります。日本公演と比べれば随分とはっきりと、テーマを演奏しています。

 そしてアリスによる6分ほどのピアノ・ソロとなるのですが、彼女がバンドに加わってからのソロは効果音的な演奏だったのですが、ここでは刺激ある演奏になっています。

 さてここからがこの日のこの曲の聴き所となります。ファラオのテナー・サックスからコルトレーンのソプラノ・サックスへ続く7分ほどの演奏です。この二人の交代場面を見失うほどに、二人の演奏に通じ合うものがあります。二人の魂の語り合い、叫び愛のようです。

 演奏が始まってから19分50秒ほどのところで、30秒ほどの恐らくはコルトレーンの叫びがあります。ここでも胸を叩いていたのでしょう。

 コルトレーンが再びテーマを吹き、壮絶で聴き惚れる演奏が終わっていきます。

 コルトレーンの演奏の姿の変遷を見つめる際には、この「マイ・フェイヴァリット・シングス」の演奏スタイルの変化する様子が一つの見方となります。その中でこの日の「マイ・フェイヴァリット・シングス」は、意義深い存在であると私は考えます。




【エピソード、ドラムは誰なの?】
 資料07には、藤岡氏が2003年10月19日にニューヨーク市で行ったラシッド・アリとのインタヴューで、次の証言を得たとある。ラシッド・アリは先約のためこのコンサートに参加できず、代わりに弟の Muhammad Ali が参加したとのことである。

 2014年に発売されたこのテンプル大学でのコンサートのライブ盤CD2枚組のクレジットでは、ドラムス奏者としてラシッド・アリの名があり、弟のムハマッドの名はない。またブックレットには次の記述がある。

Special thanks to Michael Biel, and to Yasuhiro “Fuji” Fujioka for his perseverance in tracking down the original tapes.

 このCD制作に藤岡氏が大きく関わっているのだ。その意味では2003年のインタヴューがラシッド・アリの記憶違いであったことが、後から判明したのかもしれない。

 なお実際に聴ける演奏はドラムスの録音レベルが極端に低いものである。その中にあって「Leo」では6分のドラム・ソロがあり、そこでは他の演奏よりは明確にドラム演奏を聴ける。私が聴く限りでは、この日の4ヶ月前の日本公演でのラシッドの演奏の姿は感じられないものであった。

 なおベースはギャリソンではなくソニー・ジョンソンが参加している。このベース奏者に関する情報は、新・世界ジャズ人名辞典にも、ネット上にも見当たらない。

初収録アルバム

【ついでにフォト】

2005年 香港

(2021年9月29日掲載)