19630429-18

Dear Old Stockholm
(Traditional)
(10分43秒)



【この曲、この演奏】
 北欧には様々ないい民謡があり、多くのジャズメンが素材として使用しているが、その中でも最も有名な一曲です。ゲッツが1950年代初めにスウェーデンを訪れたとき、現地のミュージシャン達とこの曲を吹き込み、一躍名曲の殿堂入りを果たしました。(資料14)

 ここでこの曲を採用したのは代役ヘインズとのマッチングを考慮して、彼がこの曲をゲッツのところで度々演奏いたであろうと考えてのことでありました。(資料09)

 コルトレーンでこの曲と言えば、誰もが頭に浮かべるのはマイルス・バンドに加入してすぐの1956年6月5日に、「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」のセッションでの演奏でしょう。

 一方でコルトレーンのリーダー・セッションとして、ここで演奏されたこの曲を思い浮かべるコルトレーン・ファンは少ないのではと思います。まずこの演奏が最初に世に出たのは1965年に発売された、インパルス!のオムニバス・アルバムでした。この作品を購入した方は、ごく僅かのことだったと思います。
 次にこの演奏が世に出たのは、1978年に「To The Beat Of A Different
Drum」という発掘盤でした。コルトレーンの演奏は全て集める、という熱心な方はここで耳にしたことでしょう。その後も編集盤で何度かこの曲が登場しているようです。

 さて演奏ですが、昔の北欧の雰囲気漂うのがこの曲のいつもの姿だとすれば、ここでは殺伐した都会の喧騒が漂っている演奏です。コルトレーンのこの時に頭に浮かんだ光景だったのでしょう。これはこれで聴きごたえあるものです。




【エピソード、エルヴィンのお休みについて】
 資料07を眺めると、この年にエルヴィンは5ヶ月間に渡り、コルトレーン・バンドで演奏を行っていない。3月7日のハートマンとのセッションの次にエルヴィンがコルトレーン・バンドに登場するのは、8月19日から始まったショウボートへの出演であった。

 この「お休み」の理由について、資料01より引用する。

 彼(ロイ・ヘインズ)はボストンの生まれである。そして皮肉とでもいおうか、ボストンは、エルヴィン・ジョーンズが麻薬不法所持で逮捕された市なのである。そのエルヴィンは、裁判所の命令により、二者択一の決意をせまられていた。刑務所あるいは、リハビリテーションのための病院行きである。

 刑務所行きだとすれば、リッカーズ・アイランド刑務所に入ることになるし、リハビリテーション施設の世話になるということになれば、ケンタッキー州レキシントンにある国立精神病治療研究センター、麻薬関係者のあいだではレキシントンという呼び名で広く知られている施設に入ることになるのだ。このセンターの付属施設の一つとして、麻薬常用患者が自発的に入院して治療を受ける治療期間が設けられている。だが、ジョーンズの場合と同様に、入院患者の大部分は半ば強制的に入院した連中だった。

収録アルバム

【ついでにフォト】

2008年 みなとみらい

(2021年4月26日掲載)