Untitled Original 11386 (take1)
(John Coltrane)
(8分38秒)
【この曲、この演奏】
アンタイトルものの一つで、他との区別のため、マトリックス番号11386を付け、2018年に発売されました。資料07では5つのテイクが確認されており、最後まで演奏したテイクは3つあります。全てのテイクでコルトレーンは、ソプラノサックスで演奏しています。
まずは最後まで演奏の一つ目、テイク1です。曲はリズミカルで叙情的なもので、早いテンポでの演奏、まさにコルトレーンの得意分野といったものです。その演奏では、コルトレーンの祈りと微かな叫びを感じるソプラノでのソロが強く記憶に残るものですが、マッコイのピアノもバッキングとソロに溌剌としており、また中盤でのギャリソンとエルヴィンの丁々発止も聴き所となっています。
【エピソード、バーバラ・ガードナーの記事 その4】
これだ、と思った彼(コルトレーン)は、レスター・ヤング(の浮揚するテナー・サウンド)とチャーリー・パーカー(の開拓したビバップの疾走感)を主な新機軸とし、両者の音楽的要素を活用することによって、自己のテナー・スタイルを発展させていった。このスタイルにおいて、彼は群を抜いていた。優れたジャズマンが何人も彼に熱い視線を送った。やがて彼はアール・ボスティック、ジョニー・ホッジス、ジミー・スミスらのグループに誘われてプレイし、一九五七年(訳注=一九五五年の間違い)には、マイルス・デイヴィスと結ばれた。マイルスとは一度別れて、一九五八年(訳注=一九五七年の間違い)にはセロニアス・モンクと一緒に仕事をしたが、同年末には再びマイルスの元に戻っている(コルトレーンがマイルス・バンドに復帰したのはおそらく一九五八年一月のこと)。
マイルスとの共演で、偽りの安心感は泡のように弾け飛んだ。コルトレーンは再び、音楽的自由と個性を求める抑圧された思いと対峙することを強いられたのだ。
「自分のプレイに一味付け足すようになったのは、マイルスのグループに入ってからだ」とコルトレーンは言う。「あのグループにいると、自分の未熟さを感じずにはいられない。ノルマはとても高い。私はバンドに十分貢献できないと感じた」
そこで彼は一味付け足した。音楽的真実に至ろうとする自らの思いを。
「あの頃、私はプレスティッジとレコード契約を結んでいた。だから何かしらレコードに吹き込むなら、自分らしいものにしようと心に決めた」
この決意を起点に、ジョン・コルトレーンはもっとも個性的なミュージシャンの一人として頭角を現していく。
(資料04より)
【ついでにフォト】
2005年 香港島 トラム
(2021年4月13日掲載)