2022年3月1日掲載

John Coltrane
The Lost Album
impulse!原盤
1963年3月録音

 コルトレーンのインパルス!時代には多くの録音セッションを行い、そこでは同じ曲を何度も録り直しておりました。その中で当時には発売されなかった別テイク、或いは発売されなかった曲自体が、後年になって「奇跡の発掘!」となって発売され続けております。

 ジョニー・ハートマンとのセッションの前日の1963年3月6日に、ヴァンゲルダー・スタジオで黄金カルテットで収録を行いました。7曲を演奏していますが、その当時に発売されたのは「Vilia」だけでした。しかもインパルス!のオムニバス・アルバムに収録されてのものでした。そうすると、コルトレーンやシールはこのセッションには手応えが薄かったと考えるのが、普通でしょう。

 存在自体は知られていたこのセッションが、2018年にヴァーヴ/インパルス!から発売されました。コルトレーン・ファンからすれば、それまで長年に渡って続けられた「奇跡の発掘!」活動の一環と受け取り、また一つ公式録音未発表ものを聴けるようになったと喜んでいました。

 しかしこの2018年のヴァーヴの本作宣伝活動は、力の入ったものでした。大手が本気で販売促進活動を行うのですから、グラミー賞も当然のことなのでしょう。
 また何種類ものパッケージが用意されました。私が購入したのは、発売された全テイクが聴けるCD2枚組でした。

CD1
Untitled Original 11383
Nature Boy
Untitled Original 11386 (take1)
Vilia (take3)
Impressions (take3)
Slow Blues
One Up, One Down (take1)

CD2
Vilia (take5)
Impressions (take1)
Impressions (take2)
Impressions (take4)
Untitled Original 11386 (take2)
Untitled Original 11386 (take5)
One Up, One Down (take5)

 各曲については「今日のコルトレーン」をお読みください。

 バンドとして熟成されていく時期の演奏が楽しめます。そして幾つかの取り組みも聴き取れ、聞き応えあるものです。

 さてこの2018年の発売で私が驚いたのは、日本国内での反響の高さでした。インターネット上での本作品に関する記述が、公式系やブログ、そしてSNSで実に多くありました。そしてそれは世界的なことであったのでしょう。売上数は分かりませんが、それなりのヒット作だったと想像します。

 私はこのセッションを聴けることに喜び、そして音楽に限らず何かを売るには、その質の高さと共に販売促進活動が重要であることを、コルトレーンを通じて再認識しました。