19580711-05

19580711-05
Don’t Take Your Love From Me
(Henry Nemo)
(9分15秒)



【この曲、この演奏】
 資料14には掲載されていないヘンリー・ニモのバラッドですが、ウィキペディアによれば1941年の曲で、ジャズ界でもジョニ・ジェイムスやシナトラ、そしてケイ・スターなどが取り上げているとのことです。

 コルトレーンの演奏記録は、本セッションだけです。(資料06)

 この曲は女性側からの歌なのでしょうけど、恋愛の場面で曲名のような女々しいことを言うのは男なのは、世の常です。コルトレーンのバラッド演奏を聴いていると、恋愛に踏ん切りをつけられない男の弱さを、精妙に描いています。続くハーデンもそんな感情を、何とか出しております。そしてガーランドは、どちらかと言えば恋愛の場面での女性の気持ちの切り替えの直前を描いているような、そんな演奏です。

 コルトレーンのバラッド演奏の、素晴らしい演奏の一つであります。




【エピソード、A.ブルームのインタヴュー、1958/6/15、その12】
(JC=ジョン・コルトレーン、AB=オーガスト・ブルーム)(資料04)

AB 以前はかなり酒を飲んでいた?

JC ああ。だから、モンクがバンドを組む頃には酒をやめていた。気づいたんだ。酒をやめて、全てが好転した。うまくプレイできて、うまく考えられるようになった。それに彼の音楽・・・あれは“刺激的”だったよ(笑)。

AB ファイヴ・スポットでのギグはどんな感じだった? 私も何度か観たけど、曲の途中でモンクがピアノから立ち上がり、ピアノの脇でちょっと踊り出したんだ(コルトレーンが笑う)。で、君はサックスを抱えたまま、ほったらかしにされた。

JC (笑)あれは寂しかったね(両者笑う)。バンドスタンドの上で、ちょっと寂しくなっちゃったよ。

AB ああやって一人で(ピアノなしで)演奏するときは、どうやってコード進行についていくんだい? 演奏をしながらコード進行について考えるのかい? それとも、ベース奏者がプレイでコードを導いてくれるのかい? あるいは・・・

JC ああ、ベース奏者だね。私は彼に頼っていた。

AB 具体的には、ベース奏者はどんなことをするんだい? 例えばウィルバー(・ウエア)がベースを弾くときには、各コードのドミナント音を弾いたりするのかい? 私にはうまく言えないけど、君なら説明できると思う。

JC そういう場合もある。だが、ウィルバー・ウェアのようなベース奏者はとても独創的でね。いつもドミナント音を弾いてくれるとは限らない(笑)。

AB そうは言っても、彼がどんなプレイをしようと、コード進行の方向性みたいなものを示してくれる音はあるんだろう?

JC ああ、あったような気がする。いや、なかったかも。ウィルバーって男は、時にはまったく逆のアプローチでプレイする。何と言うか、ちょっと異質なプレイをするんだ。その曲のことを知らなかったら、絶対についていけない(笑)。というのも、彼は音を付け足していくんだ。下から上から音を足していって・・・緊張感を煽っていく。だから元に戻ったときは、なんだか騙されてたような気分になる。まあ、私はだいたい曲を知っていたから、どういう変化にもついていくことはできた。だから、最後にはみんな一緒に着地できるわけさ(笑)。

初収録アルバム

【ついでにフォト】

2010年 ペナン

(2020年2月11日掲載)