19560420-01

High Step
(Barry Harris)
(8分9秒)



【この曲、この演奏】
 この曲はピアニストのバリー・ハリス作とクレジットされており、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです(資料07)。

 「シンプルだがなかなかアトラクティヴなテーマを持ったバップ・チューン」(資料09)のこの曲を、まずは三管の重なりが印象的なテーマ演奏から始まります。続くソロは、アダムス – フラー – コルトレーン – チェンバース – フィリー・ジョーの順番で進んでいきます。各奏者の陽気な中に刺激を織り込んだ演奏は、コルトレーンにとっても良い経験となったことでしょう。この曲はピアノ・レスで演奏されました。

 この演奏は長らくお蔵入りとなり、1975年に権利売却先のブルー・ノートから発売されました。




【エピソード、トランジションでのセッション】
 コルトレーンは1956年3月2日のチェンバースのジャズ・ウェスト・セッションに続いて、チェンバースのトランジションでのセッションにも参加した。共に短命で終わったレーベルであるが、このトランジションの方が人気レーベルと言えよう。このレーベルから発売されたドナルド・バードの3枚と、ダグ・ワトキンスの作品は、オリジナル盤市場で高値で取引され続けている。

 またこのトランジション・レコーズはWikipediaにページがあるので、そこから引用して紹介しよう。

 1955年にトム・ウィルソンによってマサチューセッツ州のケンブリッジで設立された。25枚のジャズ・レコードを制作したが、1957年に会社は終わりとなった。このレーベルの権利はその後にブルー・ノートとデルマークに売却された。レコード会社は長く続かなかったのだが、トム・ウィルソンはその手腕を評価され、コロンビア・レコードやヴァーヴ・レコードでプロデューサーとして活躍し、ボブ・ディランやサイモンとガーファンクルなどのレコード制作に関わった。

 才気溢れる25歳の若者のプロデュースによって行われた本セッションとなるのだが、3曲しか収録されなかった。

 最後に資料07によれば、本セッションの日付について混乱があるようだ。1955年4月20日とか、1955年11月とかの説もあるとのことだ。マイケル・カスクーナの調査によれば、このセッションの録音テープ収納箱には4月20日とあり、年は未記載とのことだ。他にもペッパー・アダムスの話であったりと、本セッションの録音日付はいくつかの説が世に流れたとのことだ。資料07では、識者による総合的な判断で、1956年4月20日としている。

 さらに資料07では、本セッションのリーダーがポール・チェンバースとなった理由も不明としている。録音した3曲の中の1曲(Trane’s Strain)が1956年にトランジション・レーベルのオムニバス・アルバムに収録され発売された際には、リーダーはクレジットされていなかったのだ。

CD追加曲

【ついでにフォト】

2005年 香港

(2021年12月15日掲載)