Limehouse Blues
(Fuber / Braham)
(4分37秒)
【この曲、この演奏】
1922年に書かれたこのブルース曲ですが、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。
楽しくブルースを陽気にとのこの曲のメロディを盛り上げた後に登場するのは、アダレイのソロです。思い切りアクセルを踏み込んだアダレイの演奏は、スポーツ車をかっ飛ばすかのような爽快な気持ちになるものです。続くのはコルトレーンのソロですが、まるでアダレイに対抗するかのように速度全開で迫り、アメリカントラックの迫力でスポーツ車を抜き去るかのような、重量感溢れる演奏です。
ケリーが両者の間に入ってこの曲が持つ陽気さに雰囲気を戻すソロを行い、楽しくこの演奏は終わって行く感じになります。
しかしそれに続くのは、アダレイ – ドラムス – コルトレーン – ドラムスとの8小節交換から4小節交換との展開です。ここでの両者の気持ちのぶつけ合いは、決闘のようでもあり、笑顔で楽しんでいるようでもあり、二人の存在を強く感じるものです。マイルス・バンドでは、このような演奏は出来ないことなのでしょう。
この曲の後に、6分10秒の「Stars Fell on Alabama」が、コルトレーン抜きで演奏されます。この曲の持つ美しさをしっかりと表現するアダレイに酔いながら、このセッションは終わっていきます。
【エピソード、ライナー・ノーツから】
ドン・ヘックマンがアルバム「Cannonball Adderley Quintet in Chicago」に書いたライナー・ノーツから、いくつか引用する。
初期のコルトレーンは、芸術的革新につきものの、いわれなき非難中傷の矢面に立たされていた。しかし1950年代末にいたると、ハーモニック面における密度の濃さを追求するために、手のこんだやり方で過激にそれを詰めていく彼の方法は、まぎれもなくパーカー以後に編み出された重要な新展開の一つだ、と認めるオーディエンスの数も相当数に達してきたのである。
最近のコルトレーンはと言えば、アダレイとはすっかり異なる方向に足を進めつつある。このレコーディング・デイトにおける彼の演奏は、彼が一つの頂点を究めた演奏という風なものではなく、むしろジャズ・シーンにデビューして以来彼の一大特徴を成してきたところの「一貫した芸術的成長と発展」の途上における、貴重な一段面を垣間見せたものと取るのが妥当だろう。
【ついでにフォト】
2013年 みなとみらい
(2022年6月29日掲載)