‘Round About Midnight
(Monk – Williams – Hanighen)
(5分54秒)
【この曲、この演奏】
モンクのこの名曲ですが、コルトレーンの演奏記録は全てマイルスとのものです。ライブでの演奏が多く、それらのいくつかはブートレグで聴くことができます。スタジオ録音では3回あり、その最初が本セッションであります。そして二度目はこの年の10月26日に、プレスティッジへのマラソン・セッション後半で演奏され、そちらは「Miles Davis and the Modern Jazz Giant」のアルバムで、1959年4月に発売されました。三度目は1958年6月25日のミッシェル・ルグランの大人数セッションでの演奏で、そちらは1959年1月に発売されています。
さてその演奏ですが、コルトレーンのテナーの響きを下地にしてマイルスのミュート・トランペットが登場する、その最初の瞬間から心を奪われてしまう演奏です。この演奏については、資料09での解説をお借りします。
「モンクの名曲をマイルスは非のうちどころがない完璧なアートに仕上げてしまった。マイルスは、ミュートをつけ、この美しいメロディをピリピリと張りつめるような緊張感の中であくまでも静かに歌い上げる。すると、突如その静けさを破ってトレーンが堂々と、実に堂々と登場するのだ。この瞬間は何度聴いてもドキドキしてしまう。まさに、ジャズの魅力がこの一点に集約されていると言って良いほどだ」
この演奏はアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」のA面1曲目に収録され、1957年3月に世の中に登場しました。
【エピソード、’Round About Midnight の演奏回数】
どの資料を眺めても、この日にこの「’Round About Midnight」の演奏回数は1回となっている。このコロンビアでのマイルスのアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」向けの三日間のセッションでは、合計11曲演奏された。そしてその10曲では、複数回の演奏記録が残されている。しっかりと演奏を練り上げていき、一切の妥協を排したセッションだったと言えよう。
それが、最後の演奏の「’Round About Midnight」は、一度限りの演奏となっている。
このバンドでの演奏はプレスティッジでのセッションもあり、既に完成の域にあり、その意味から一回で素晴らしい演奏が行えたとの見方があるであろう。
その一方で、この曲の別テイクが眠っているとも考えられる。私はいつの日にか、「大発見」の報に触れるのを楽しみにしている。
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい、ラ・マシンによるクモ
(2021年12月28日掲載)