Ah-Leu-Cha (master)
(Charlie Parker)
(5分47秒)
【この曲、この演奏】
アルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」に収録されたこの曲は、テイク4とテイク5を編集したものでした。資料07によれば、テイク5の冒頭から1分59秒まで、その後にテイク4のマイルスのトランペット・ソロの中盤から最後までの3分48秒を繋いだとのことです。
さてそのマスターテイクですが、こう書いてから聴きますので、どうしても意識は1分59秒の場面に集中します。当然なのでしょうが、意識して聴いても私には「繋ぎ瞬間」は分かりませんでした。
私としてはテイク5をそのままマスターとしても良かったのではとも思います。それでも編集したことの良さをあげるならば、2分ほどのマイルスのソロに緊張感が続いていることでしょう。コルトレーンのソロは、テイク5の方が足が地についているような気がします。
ただしこの編集によって最良の演奏をアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」に収録しようとの意気込みは、マイルスの執念なのでしょう。そんな手間がかかることは大っ嫌いなプレスティッジでは出来なかったプロ・ミュージシャンの意気を、ここにぶつけたのでした。
【エピソード、発売日】
コルトレーンはマイルスのバンドで数多くの演奏を行ってきた。その最初のセッションの中で、2曲目の「Ah-Leu-Cha」がアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」に収録された。その発売日は資料07によれば、1957年3月4日である。
レコードの発売日を特定するのは難しいことである。しかしその発売年月がオリジナル盤コレクターにとっては、重要な意味を持つのである。オリジナル盤市場で人気のブルーノートの発売年月については、1970年台からマニアが必死に推測してきた。2010年になり、レコード蒐集家でありマンハッタンにジャズ盤専門店を経営しているフレデリック・コーエン氏が、ブルーノートの1500番台と4000番台の発売日を特定し、それを出版した。その手法はダウンビート誌に掲載されたブルーノートの広告を調べ上げてのものであった。
この手法は、マニアの手によってプレスティッジやリヴァーサイドなどのレーベルの主要作品の発売年月特定作業へと広まり、その成果はWikipediaで確認できる。私の記憶で言うならば、2018年頃からWikipedia上で、メロディメーカー誌などの広告調査により確認できた発売年月が掲載され始めたのだ。それまでのWikipedia上での発売年月情報には常に疑問符があっただけに、画期的なことであった。
それでも年月を掴むまであった。しかしアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」の場合は、発売年月日まで特定されている。これは権利所有者の公式発表によるもである。
【ついでにフォト】
2008年 みなとみらい、横浜
(2021年11月21日掲載)