2024年3月9日掲載

Julius Hemphill & Warren Smith
Chile New York
Black Saint原盤
1980年5月録音

 ジュリアス・ヘンフィルが亡くなったのは1995年のことでした。今日取り上げる作品はそれから3年後に発売されましたが、録音は1980年です。

 サックス奏者のジュリアス・ヘンフィルと、打楽器奏者のウォーレン・スミスのデュオ作品です。ウォーレン・スミスといえば1970年台のロフト・ジャズの動きを支えて一人であり、多くのミュージシャンとの交流があり、ジュリアス・ヘンフィルとも共演しておりました。

 ヘンフィル作の7曲が収録されている本作品には「Chile New York」とありますが、チリにニューヨークで何を意味しているのかは分かりません。またジャケットには「Muralla De 400 Rostros Formada En Arcilla Horneada En Nueva York」と、チリの公用語であるスペイン語で書かれています。Google翻訳によれば「ニューヨークで焼いた粘土から作られた400の顔の壁」との意味で、ジャケットにある写真のことなのでしょう。

 70分ほどのジュリアス・ヘンフィルとウォーレン・スミスの演奏が繰り広げられています。録音した1980年当時は、半分ほどの演奏をLPレコードに収録する考えだったのでしょう。

 その演奏内容は、二人が血気盛んに歩んできた1970年台を総括するようなものであり、新たな1980年台の方向を探っているようなものでもあります。収録されている70分を聴き通していると散漫に感じる場面もありますが、サックスとパーカッションでの演奏に圧倒される瞬間は気持ちが昂るものです。

 録音から18年経っての発売ということもあり、この作品が話題になることは滅多にありません。しかし、1970年台のジャズの締めくくりとして貴重な演奏であると、私には思える作品です。