2021年11月4日掲載

Lee Konitz – Michel Petrucciani
Toot Sweet
Owl原盤
1982年5月録音

 ペトルチアーニの初期のこの作品は、アルト・サックス奏者の巨匠リー・コニッツとのデュオ作品です。19歳のペトルチアーニ、そして54歳のコニッツとの演奏です。

 ジャケットには二人で猫のいるリヴィング・ルームで演奏する様子がありますが、パリのCentre Musical Bösendorfer でのライブ演奏です。

 会場名となっている Bösendorfer とは、オーストリアで創業されたピアノ製造会社のベーゼンドルファーです。パリにあるこにピアノ会社のショウルームに併設されている演奏会場が、「Centre Musical Bösendorfe」なのでしょう。ピアノ会社の演奏会場ですから、ピアノの響きに特化した音響設計が施されているはずです。ペトルチアーニの奏でるピアノの響きは、その全てが収録されているかの素晴らしいものです。単純にピアノの響きを楽しめるアルバムというのも価値あるもので、その意味ではピアノだけでの演奏のペトルチアーニ作の「To Erlinda」があります。

 この会場ではサックスも豊かに響き渡っており、コニッツの悲喜漂う演奏がしっかりと録音されています。「’Round About Midnight」では、二人のでの16分間の演奏です。二人の音が重なりながら、恐らくはコニッツのアレンジで趣向が凝らされた展開で、この曲をたっぷりと楽しませてくれます。

 曲間に拍手がありませんので、無観客での演奏だったのでしょう。その会場ですが、ネットで調べても情報がありませんでした。ウィキペディアによれば、ピアノ会社ベーゼンドルファーは経営不振から2008年にヤマハの完全子会社となったとのことです。会社再建に向けてのスリム化でこの会場はベーゼンドルファーの手を離れたのでしょうけれど、ピアノと音楽を愛するベーゼンドルファーの気持ちは、このペトルチアーニとコニッツのアルバムに生きています。