2020年6月4日掲載

John Coltrane
Settin’ The Pace
Prestige原盤
1958年3月録音

 1960年代に入ってから発売されたプレスティッジのコルトレーン作品は、語られることが少ないものです。気持ちが既に新天地に向かっているコルトレーンの演奏であり、またアトランティックでの諸作が既に世に出た時期に発売されたこともあり、コルトレーンの数多い作品の中で埋もれていったのでしょう。

 インターネットが世に定着した2000年頃に話題となっていた「2ch」などで、「私はSettin’ The Paceが好きだ」との書き込みを何度か目にし、それから20年経った今でも時折目にするコメントです。それはそうでしょう、本作品はガーランドが引っ張り出してくる曲をコルトレーンが楽しく演奏しており、そんな3月26日に録音された5曲の中から本作に4曲が収録されており、またワン・ホーン・カルテットでの演奏なのですから。

 曲毎のコメントは「今日のコルトレーン」を参照願うとして、今日はアルバム構成に気持ちを移して聴いてみます。

 やはりA面一曲目が、このアルバムの顔でしょう。ジャズの世界では影が薄い曲ですが、ガーランドが引っ張り出してきたこのバラッドを、ギリギリの美しさで見事に表現するコルトレーンの演奏力の高さに、誰もが酔ってしまうことでしょう。衝撃に強うさな滑床皿も、簡単に割れてしまうことがありますが、そんな心の弱さを感じる演奏内容です。

 B面の頭には、凄みと粘りっこさを感じる演奏の「Little Melonae」を取り上げており、これも印象深いものです。
両面とも二曲目には軽快な演奏を用意しており、ガーランドを始めとするリズム陣も好演奏を繰り広げ、影に隠れながらもコルトレーンのそれとなく愛される作品となっています。