John Coltrane
Coltrane Time
United Artist原盤
1958年10月録音
各曲解説「今日のコルトレーン」
このユナイテッド・アーティストにおける1958年10月13日のセッションで、コルトレーンはセシル・テイラーと「会話らしい会話は交わさなかった」、とのことです。
俄には信じられない話ですが、ノルウェーのジャーナリストであるランディ・ハルティンの著書「Born Under The Sign Of Jazz(ジャズの星の下に生まれて)」に書かれていることなので、事実であります。この本の157ページから162ページにかけて、1963年10月23日のオスロ公演の夜の部開幕前とその後に自宅に招いて、コルトレーンとの会話に関することが書かれています。その中に、コルトレーンはセシル・テイラーと「会話らしい会話は交わさなかった」とあります。
トランペットにケニー・ドーハム、ベースにチャック・イスラエル、そしてドラムスにルイ・ヘイズとのクインテットで行なったセッションです。
A面
Shifting Down
Just Friends
B面
Like Someone in Love
Double Clutching
ユナイテッド・アーティストでのこのコルトレーン参加作品は、次の通りに発売されました。
UA UAL 4014 (Cecil Taylor Quintet / Hard Driving Jazz、mono、released 1959)
UA UAL 5014 (Cecil Taylor Quintet / Stereo Drive、stereo、released 1959)
その後にコルトレーン名義で発売されました。
UA UAJS 15001 (John Coltrane / Coltrane Time、released 1962)
この「今日の1枚」は、自分でジャケットをスキャンして掲載することに拘って、25年間 2700枚以上のジャズ・アルバムを掲載してきました。本セッションからのアルバムで、私がスキャンできるCDで持っているのはコルトレーン名義の作品なので、このような形での掲載となりました。
各曲については「今日のコルトレーン」をお読み下さい。
ここでのセシル・テイラー、コルトレーン、そしてケニー・ドーハムの演奏スタイルは噛み合うことなく、4曲の収録が終わっています。世間での酷評はその通りなのでしょう。
お金を出して買った作品は素晴らしい内容でなければならない、こんな思いの方々は、ジャズ・アルバムを150枚ほど買ったところで、ジャズへの興味は終わっていることでしょうし、その終わりが本作品であったかもしれません。
しかし、1958年の時点でのセシル・テイラーとコルトレーンが共演して作品を残したことに着眼し、後に大物プロデューサーとなっていくトム・ウィルソンの意図はなんであったのかに考えを巡らし、「会話らしい会話は交わさなかった」ことも頭の片隅に置いて本作を聴けば、お宝が詰まった作品のように感じます。