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証言60
ECM-1063
Enrico Rava
The Pilgrim and the Stars


JAZZDISCO.org から

ECM 1063 Enrico Rava – The Pilgrim And The Stars 1975

Enrico Rava, trumpet; John Abercrombie, guitar; Palle Danielsson, bass; Jon Christensen, drums.

Tonstudio Bauer, Ludwigsburg, West Germany, June, 1975

The Pilgrim And The Stars
Parks
Bella
Pesce Naufrago
Surprise Hotel
By The Sea
Blancasnow

 本「新版 ECMの真実」での60人目の証言者は、エンリコ・ラヴァである。欧州ジャズを代表するトランペッターのラヴァは、1975年からECMから作品を発表してきた。そして一時ECMを離れて、2004年から再びECMで作品を発表するようになった。

 1975年から1988年まで6枚の作品をECMに残したラヴァが、なぜECMを離れたのか、証言の中でラヴァは次のように語っている。

 マンフレート・アイヒャーはプロデューサーであると同時にミュージシャンでもある。彼が加わるとイメージが広がり、それはそれでいいと思っている。ただ彼はたくさんのアーティストを抱えているからいつも忙しくてね。僕は僕でいろんなアイディアが次から次へ浮かんでくるから最低でも1年に1作は形にしていかないとフラストレーションが溜まってね。それが原因で一時ECMを離れて他所で制作していた。

 ここでは1975年6月にルートヴィヒスブルクのスタジオで録音した、エンリコ・ラヴァのECM第1作を取り上げる。ジョン・アバークロンビーが加わっての、カルテットでの演奏だ。

感想

 国内発売当時の邦題は『魚座の難破船』であったとのことだ。これはB面1曲目のイタリア語での「Pesce Naufrago」が意味することだ。A面1曲目のアルバム名にもなっている「The Pilgrim and the Stars」は、「巡礼者と星」との意味だ。どちらも古き時代の冒険者魂を感じるものだ。

 演奏はラヴァならではの哀愁があるが、それよりもラヴァの独特なブルース感覚が全体に流れているように感じた作品だ。アバークロンビーとラヴァの刺激のぶつかり合いに耳を傾けながら、30歳代半ばから始まるラヴァの快進撃を予感させる作品である。

2024年8月13日掲載