Attaining
(John Coltrane)
【この曲、この演奏】
この曲は4回の録音があり、3回目に4回目をインサートしてマスター・テイクとしました。ここではその4つのテイクについて、触れていきます。
05 Attaining (take 1)(13分31秒)
短い技師の指示声の後に演奏が始まりますが、本テイクよりもテンポをおとした演奏になっています。全体の構成は本テイクと同様ですが、前半のコルトレーンのテナー・サックスは、本テイクがまっすぐ進んでいると表現するならば、ここでは左右に揺れる場面が感じられます。ピアノ・トリオでの演奏では、特にブロック・コードのあたりでトリオの乱れがあります。
もう一回やれば良いのができるよ、との思いになったのでしょう。
-06 Attaining (take 2)(1分2秒)
技師の指示声の後に間を置いて演奏が始まります。悪いものを感じませんが、演奏自体は40秒ほどで中断しました。
-07 Attaining (take 3) (10分22秒)
-08 Attaining (take 4) (4分36秒)
テイク4は技師の「インサート 1」の声の後に、ピアノ・トリオ演奏の最終部から始まり、最後まで演奏されています。恐らくはピアノ・トリオの次のドラム・ソロのところから、このテイク4がテイク3と置き換わったのでしょう。
そうすると後テーマに不満があったとなるわけですが、確かにカルテットのまとまり具合とテナー・サックスの響きの艶感が、テイク3ではもう一歩となっています。
私が2013年発売のコンプリート盤で確認できたことの一つが、編集してマスター・テイクにしたことが、コルトレーンの意思であったことです。
【エピソード、このセッションの10日前のライブの様子、その2】
一九六五年八月十五日、シカゴのソルジャー・フィールドで行われたダウンビート・ジャズ・フェスティヴァルに、コルトレーン・カルテットはメイン・アーチストとして出演した。
このパフォーマンスは、ディランのニューポート・フォーク・フェスティヴァルでのステージや「春の祭典」などと同じく、彼の転換点となった演奏として知られている。ディランや「春の祭典」のケースと同様、観衆が受けた混迷は、半分は誇張されており、半分は真実だ。
コルトレーンはカルテットにアーチー・シェップを加えた顔ぶれにより、37分間にわたって演奏している。彼らは「ネイチャー・ボーイ」のテーマからスタートし、集団によるインプロヴィゼーションを経て、「ブルー・ヴァルス」に入る。その音楽は荒削りで耳障りだ。リポートによると、観衆の大多数は苛立ちをつのらせ、多くの人が席を立って出ていったという。コルトレーンがこうしたスタイルによってレコーディングした曲は、その頃既に発売されていたはずである。無料のフェスティヴァルで一日じゅう太陽の照りつけるなか、ウディ・ハーマンやジェリー・マリガンやモンクやジョー・ウィリアムスといったミュージシャンによるオーソドックスなパフォーマンスを聴いてきた一般のジャズ・ファンは、こうした不協和音の洪水に初めて接して、もう家に帰ろうと思い立ったのだとも考えられる。
(資料03より)
この文を読み、より一層このジャズ祭のテープを聴きたくなったのは、私だけではあるまい。
https://www.youtube.com/watch?v=gZ8ze5MpxCQ
https://drive.google.com/file/d/1VKOTqJNFCUc4T53yrVpRqhENJLO6sSZb/view
【ついでにフォト】
2013年 みなとみらい
(2021年7月29日掲載)