Wise One
(John Coltrane)
(9分1秒)
【この曲、この演奏】
この曲はコルトレーン自作のバラード・ナンバーで、タイトルはコルトレーンが追い求めた「賢い真実」を意味します。(資料09)
コルトレーンのこの曲の演奏記録は、本セッションだけです。
途中終了の7つのテイク、そして最後まで演奏したらしいテイク8の後の、9回目のこのテイクが、に収録されました。
ここでの演奏の詳細は下のベン・ラトリフ氏の文をご覧いただくとして、このカルテットの一つの頂点がこの1964年にあったのだと、改めて実感する内容です。内に向っていくコルトレーンだけではなく、エルヴィン、ギャリソン、そしてマッコイもこの時期のジャズマンの中で最も輝いていた方々だったのでしょう。
この曲だけではなくこの日のセッション、ジャズ界の宝だと思います。
【エピソード、このWise Oneについて】
この曲について資料03に、次の記述がある。
ワイズ・ワンはアフロ・ラテン・リズムによるインプロヴィゼーション・パートを伴ったバラードだ。最初に登場するタイナーのソロは、彼がカルテットで吹き込んだなかでも、最も感動的なものの一つであろう。コルトレーンのソロがスタートすると、タイナーは彼が空ける間隙を埋めながら演奏する。このソロでもコルトレーンは長いフレーズを使ったりスピードを速めたりせず、同じリズムで三音や四音からなるパターンを用い、それらをさまざまに組み合わせながら吹く。彼は呪文のようなフレーズ、マイルス・デイヴィスとともに赴いた一九六〇年のヨーロッパ・ツアーにおけるステージやチェイシン・ザ・トレーンで何分間にもわたって披露したフレーズ、を短く吹き、それを句読点のようなかたちで挿入する。彼のプレイは抑制されている。このころ彼は理不尽なほど長く吹き続けることで有名になっていたが、レコーディングに際してはバランス感覚を保って演奏していた。
【ついでにフォト】
2010年 ペナン、マレーシア
(2021年5月18日掲載)