19630707-03

Impressions
(John Coltrane)
(23分8秒)



【この曲、この演奏】
 ヴィレッジ・ヴァンガードでの熱演ライブ演奏の翌年にコルトレーンはこの曲を、3回(4/12, 6/19, 6/20)のスタジオ・セッションで演奏しましたが、当時はどれも発表されませんでした。コルトレーンのライブの定番曲であり、スタジオ録音ではしっくりこないとのコルトレーンの判断だったのでしょう。その意味では、ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルにはピッタリとハマる曲と言えます。

 このテイクは1978年に世に出てから何度かの発売がありましたが、どれも不完全な形での発売とのことです。ここでは2007年発売の Verve/Impulse! B0009076-02「My Favorite Things, Coltrane at Newport」に収録されているテイクを聴きますが、これとて最後のベース・ソロがカットされているとのことです。そうでなければ27分3秒の演奏時間とのことです。

 さてその演奏ですが、コルトレーンがテーマをソプラノ・サックスで短く演奏して始まります。これが急スピードでの演奏で、メンバーの戸惑いを私は感じました。すぐにピアノ・ソロとなります。これは6分も続くものですが、当然ながらそのテンポはテーマでコルトレーンが示した急スピードですので、トリオに息が合わないことを感じてしまいます。しかし徐々にマッコイは自分の世界を掴んでいき、後半には良い演奏となっています。次に続くのはベース・ソロで40秒ほどのものですが、音が潰れているのが残念と言えるでしょう。そしてコルトレーンのテナーサックスによるソロに続くのですが、15分に渡るものです。先ずはカルテットで2分、次にピアノが抜けてトリオで2分弱、そして11分を超えるサックスとドラムでの演奏となります。この15分間、特にヘインズとの11分間におけるコルトレーンの演奏には、鬼気迫るものがあります。この展開をこのジャズ・フェスで披露したく、コルトレーンはテンポを早めたのかなと、私は感じています。

 この日のニューポートでコルトレーンが披露した三曲は、まさにコルトレーンのライブの真髄を堪能できるものです。マイルスのバンドにいたヤツか聴いてみるか、ジャズ・フェスですのでそんな気持ちでこの会場にいる方も多かったでしょう。そんな方をコルトレーンの虜にしたと思います。




【エピソード、ロイ・ヘインズ、その2】
 資料03にあるコルトレーン・バンドでのヘインズの演奏について、いくつか紹介する。

 ヘインズのサウンドには、エルヴィンにはないスペース感と繊細さがあった。コルトレーンはエルヴィンのドライブ感に比べて、ヘインズのドラミングを「四方に広がるような、空間を埋め尽くすような」という言葉で言い表している。

 (ニューポートでのインプレッションズについて)それまでテープに録られたカルテットの演奏のどれよりもテンポが速い。ヘインズのサウンドはピッチが高く、軽快で歯切れがいい。エルヴィン・ジョーンズはスネアとバスドラムを中心として叩くが、ヘインズはスネアとライド・シンバルを多用している(エルヴィンが叩いているときよりもタイナーの弾くピアノがよく聴こえると、コルトレーンはヘインズに語っている)。ヘインズはエルヴィンよりも正確にビートを刻んだし、時おりビバップ・スタイルで爆弾を投下し、ダウンビートの間に生ずる間隙にバスドラムの一撃を入れた。コルトレーンは音楽の緊張感を持続させようとしたし、ヘインズはコルトレーンのその思いに応えようとした。「普通ならめったにないことだけど、バラードで、ブラシじゃなくスティックを使わなければならないこともあった」とヘインズは回想している。

 ヘインズはコルトレーンとの共演を心から楽しんだ。最高にスリリングな瞬間は、コルトレーンとデュエットでインプロヴィゼーションするときだった。「コルトレーンと一緒にやるときは、ドラマーとしてただ彼についていくだけでいいんだ」と彼は語る。「ほかのミュージシャンとの場合は、いろいろ気を配らなかればならない。コルトレーンとの共演で、初めてわたしが夢に描いていたような演奏ができた」実際、ヘインズとコルトレーンだけで演奏するとき、二人の結合が途方もないパワーを生み出していることは明らかだ。「インプレッションズ」の最後に挿入されているサックスとドラムスの長いデュオは驚くほどの迫力に満ちている。ヘインズは、カルテットのメンバー以外でコルトレーンと緊密な一体感を持って演奏できた、唯一のミュージシャンであろう。

収録アルバム

【ついでにフォト】

2010年 ペナン、マレーシア、タイプーサム

(2021年4月29日掲載)