19630610-08

After the Rain
(John Coltrane)
(5分32秒)



【この曲、この演奏】
 このライブの1ヶ月半前の4月29日に、コルトレーン作のこの曲がスタジオ収録され、そのカルテットでの演奏はアルバム「インプレッションズ」に収録されました。

 このフィラデルフィアのショウボートでの演奏は、コルトレーンがピアノで演奏しているものです。資料07によればこの日は2回公演であり、その合間で演奏されとのことです。またネット上で何故にコルトレーン一人でのアピアの演奏なのかについて諸説がありますが、どれも推測のもののようです。

 さてその内容ですが、休憩中の会場の会話などの中でコルトレーンがピアノをいじり、そこに願いと祈りのこの曲が、しめやかに流れていきます。この曲をコルトレーンが愛していることを、感じられるものです。是非ともカルテットでの演奏で聴きたいと思うのですが、その記録はありません。

 5分あたりで終わり、続けてコルトレーンがバラバラと鍵盤を触り、収録は終わっています。




【エピソード、ノルウェーのジャーナリスト、ランディ・ハルティンの著書から その2】
 ヤン・エリック・ヴォルは当時、「ダーグブラーデッド」誌の批評家で、私もまたコルトレーンへのインタヴューを計画していた。そこで、今日の仕事が終わったらホテルへ寄っても差し支えないでしょうか、と電話をかけたところ、コルトレーンは最初、いささか訝しげであった。疲れているから少し休みたい、と言った。それならばとリハーサルの開始時刻を尋ねると、会話の途中でいきなりコルトレーンの気が変わった。いつでも来て構わないと言うのだ。この突然の心変わりの理由は定かでないが、私が他のミュージシャンたちと懇意にしているとどこかで感じ取ったのかもしれない。ホテルに着くと、打ち解けた会話が始まるまでに長くはかからなかった。とても人好きのするコルトレーンは、畏敬の念を抱かせるオーラも同時に漂わせていた。挙措はどこか慎み深く、シャイと言ってもよかった。ミュージシャンの素顔をのぞき見ることは、常に興味深い。コルトレーンはその音楽性よりもずっと穏やかだった。もちろん、音楽からその奥深い人間性のすべてをうかがい知ることはできないが、コルトレーンは話に夢中で、実際に時間を忘れるほどだった。

 ランディ・ハルティン著「Born Under The Sign Of Jazz(ジャズの星の下に生まれて)」(London: Sanctuary, 1998, 2000)’ 157-162ページより (資料04)

収録アルバム

【ついでにフォト】