You Are Too Beautiful
(R.Rodgers – L.Hart)
(5分35秒)
【この曲、この演奏】
キャノンボール・アダレイやジュニア・マンスの演奏、そしてサラ・ヴォーンの歌でお馴染みのこの曲ですが、やはりこのコルトレーンとハートマンのものが真打となるのでしょう。
コルトレーンの演奏記録は、本セッションだけです。
このセッションで5回演奏されたこの曲ですが、資料07の情報によれば、コルトレーンは参加していなかったとのことです。このレコーディングの後でコルトレーンは、ハートマンの歌声にオブリガートするようにテナー・サックスを吹き込んだとのことです。また1970年代にこの作品が再発された際には、コルトレーン抜きの、この日の録音のままでの発売だったとのことです。
ハートマンの落ち着いた中での熱唱と寄り添うコルトレーン、エルヴィンのブラシが印象的なリズム陣、何度聴いても素敵なものです。これを脳内処理でコルトレーン抜きにしてみましたが、それもコルトレーンが真っ先に名前を挙げた歌手だけのことはあり、貫禄ものでした。
この日のセッションの最後の録音、一つコルトレーン抜きはいかがかとなり、ハートマンとリズム陣で録音、しかし後日にやっぱりコルトレーンが入ってないとね、そして重ね録り、こんなのがことの真相なのでしょうかね。
【エピソード、バーバラ・ガードナーの記事 その12】
(ドナルド・)ギャレットにとって、コルトレーンは単なる成功したテナーマンではない。
「コルトレーンは個性を解放しつつ、音楽的メッセージを届けることができる」と彼は言う。「彼を見ているとよく分かる。本当に何か言いたいことがあるならば、人はずるをしてはいけないんだよ」
このベーシストは有能なミュージシャンだ。それだけに、初期の頃は、この革新的サックス奏者の限界に気づかずにはいられなかった。だが、ギャレットは道場を交えてこう言い切る。
「それはただ、頭の中に鳴らせない音があっただけのことでね。当時も今も、表現力は上がったが、コルトレーンの方向性は変わっていない。ソニー・ロリンズもそうだった。ソニーも最初の頃はよくスクイーク(訳注=キーキー鳴るような甲高いミストーン。ただし、テクニックの一つとして意図的に出す場合もある)を出していた。ただ、頭の中で鳴っている音を吹こうとしてね。どんなに革新的なプレイヤーであれ、最初の頃のプレイには欠陥がたくさんある。以前に誰もやったことがないことをやるとしていたんだから、仕方のないことさ」
コルトレーンはハーモニーの面でもっと成長していきたいと言う。だからと言って、リズムの開発に背を向けてしまったわけではない。一九六〇年に、彼はこう言った。「リズムに関してもっと柔軟でありたい。リズムのことをもっと勉強しないといけない。テンポについてはまだまだ実験不足だ。今まではハーモニーの実験に明け暮れていて、テンポとリズムを蔑ろにしていた」
その一方で、リズムこそ、コルトレーンのもっとも創意に富む分野だと言う者もいる。
「彼の成長はリズム抜きには語れない」とベース奏者のギャレットは言う。「彼のハーモニーのコンセプトは、リズムのコンセプトが十分に発展していないと花開かない。だからこそ、彼は今成功しているんだ。彼はあらゆる方向にリズムを拡張している。それが彼に、劇的な成長を遂げる余地を与えているんだよ」
(資料04より)
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい ラ・マシンによるラ・プランセス
(2021年4月24日掲載)