Soul Eyes
(Mal Waldron)
(5分26秒)
【この曲、この演奏】
マル作のこの曲をコルトレーンは、プレスティッジ時代の1957年3月に、オールスターズ・セッションで演奏しています。それは「Interplay For 2 Trumpets And 2 Tenors」として1957年に発売されています。
この曲をコルトレーンは、インパルス!での黄金カルテット初作品で取り上げたのでした。この計5回行われたA(S)-21 「Coltrane」用セッションの1回目と2回目で演奏されましたが合格とならず、この3回目でも演奏となったのです。
さて演奏ですが、一寸の隙もないコルトレーンの表現力に、そしてこの曲の良さを一層輝かせる演奏に、深く感心します。この名バラッドを憂いの中で演奏するコルトレーンに、この数ヶ月後に行われる名盤「バラッズ」へと関連づけてしまうのは自然なことでしょう。
5年前のプレスティッジでの演奏と聴き比べました。5年前の硬質な演奏も聴き味あるもの、そこから円熟が増した本セッションでのものは、味わい深いものです。シングルモルトのウィスキーで例えるならば、5年前は8年物、こちらは12年物といったところなのでしょう。
【エピソード、カークへ語った悩み】
コルトレーンと私は、マウスピースやリードそしてもちろん音楽についてよく語り合いました。ある夜、私たちはヴィレッジで、マックス・ローチを聴いていました。その時ジョンは、自分の音楽に行き詰まっている悩みを私に打ち明けました。彼はミュージシャン仲間から、彼の音楽は「まだヒップじゃない」と酷評されたらしい。そんな時ジョンは、あのブルースについてのいやな出来事を思い出すのか、憂鬱な表情を見せていた。
ラサーン・ローランド・カーク (資料01)
このカークの言葉がいつの時期かは不明だが、上記にある「あのブルース」とは、「Coltrane Plays The Blues」のことである。1960年10月に録音され、1962年7月に発売されたアルバムだ。この作品を好評価する記事もあったが、酷評するものもあった。その中の一つが、カンサス・シティ・スター紙でジェームス・スコットが書いた記事である。
コルトレーンのテナーは、調子の狂ったチェロをでたらめにこすったような音を出す。ソプラノ・サックスは比較的しっかりしているが、内容は例によって例のごとく東洋風詠誦で、とても未来を志向しているとは思えない。
【ついでにフォト】
2005年 香港
(2021年2月20日掲載)