It’s Easy To Remember
(Richard Rodgers – Lorenz Hart)
【この曲、この演奏】
リチャード・ロジャーズの曲にロレンツ・ハートの詩によるこの曲は、1935年のミュージカル映画「ミシシッピ」の主題歌であり、ビング・クロスービーが歌って大ヒットしました。またビリー・ホリデイでも有名であり、ピアノ物ではフィニアス・ニューボーンやキース・ジャレットの名演といえます。(資料14)
この曲のコルトレーンの演奏記録は、スタジオ録音は本セッションだけです。資料07によれば、1963年6月10日にペンシルベニアのショーボートで、ドラムがロイ・ヘインズに替わった準黄金カルテットでのライブで本曲が取り上げられ、ブートレグで発売されています。また1964年6月のワシントンでのライブでもこの曲が演奏されたらしいとの情報があります。
さてシングル盤用本セッションで、B面のための曲として、このスタンダードが選ばれました。合計18回演奏され、最後まで演奏したのは8回でした。ここではシングル盤に選ばれなかった7つのテイクを取り上げます。演奏内容は、とにかくコルトレーンがテナー・サックスで、崩しを入れずにアドリブなしで、この曲を演奏するとのものです。そして、二つのテイクを除いて、ピアノはソロをとっていません。本テイクとの違いを、簡単に記します。
-13 It’s Easy To Remember (take 2) (4分40秒)
コルトレーン自身はこの曲を自分のものにしているかの演奏ですが、音のかすれが散見するのが残念なところです。ここではピアノがソロを取っていますが、バタバタした演奏でした。
-15 It’s Easy To Remember (take 4)(2分45秒)
コルトレーンがアクセントの付け方で、工夫を試みています。
-18 It’s Easy To Remember (take 7) (2分47秒)
コルトレーンが堪え切れずに捻りを入れ、そしてグタグタの演奏になっていきました。エンディングに関しても、この時点でも模索しているようです。
-20 It’s Easy To Remember (take 9)(2分46秒)
全体に躍動感をほんの少しだけ入れようとの試みが、感じられる演奏です。
-22 It’s Easy To Remember (take 11)(3分45秒)
テンポを早めてみたらどうなる、との挑戦テイクですが、出だしから失敗がみえている演奏です。ここではピアノがソロを取りますが、没テイクと分かっているのか自由に飛びまわっている演奏です。
-24 It’s Easy To Remember (take 13)(2分38秒)
ドラムの音数を増やす試みですが、コルトレーンのテナーサックスには、あれっ?、との思いが感じられます。
-27 It’s Easy To Remember (take 16)
コルトレーンのテナーに雄大さが伴ってきており、エンディングを含めまとまりが良く、決まった、との演奏です。
【エピドード、あらゆる楽器に精通するコルトレーン?】
資料12に「Coltrane Plays」とのタイトルで、「サックスだけではなくあらゆる楽器に精通し、演奏出来た?コルトレーン」として、3枚の写真が掲載されている。
ハープ 1961年11月25日(土)、西ドイツ、ハンブルグ
コートを着て笑顔のコルトレーン、演奏というより触っているだけ。
ドラムス 1961年12月4日(月)、西ドイツ、バーデン・バーデン
真剣な表情。
ピアノ 1966年1月23日、カリフォルニア州スタンフォード大学、メモリアル・オーディトリアム
モンクからもらった帽子をかぶって、立ってコードを押さえている姿。
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい
(2021年2月15日掲載)