Greensleeves
(Traditional from England)
(3分37秒)
【この曲、この演奏】
この曲の7テイク目、演奏しきったテイクとしては4つ目の演奏です。前のテイク6の好調さを活かすかのように、ギャリソンと思われるベースで始まります。続くコルトレーンのテーマはこのメロディの持っているものを直球で演奏しており、それがアドリブの切れ味に繋がっていきます。続くマッコのピアノですが、このテイクだけアドリブから入っていきテーマとなっています。このことでピアノでのテーマが効果的に響いています。
こうして苦労の末、シングル盤として生きていく演奏、恐らくはボブ・シールの強い希望に叶った演奏となりました。
さてこの演奏ですが、シングル盤(規格番号45-303)として、この日に演奏された「It’s Easy To Remember」をB面にし、翌年に発売されました。このシングル盤が何枚ほど日本に輸入されたのかですが、ジャズ・レコード販売に既に50年間に渡り携わっている方によれば、ほぼ皆無だったようだとのことです。1970年代後半から1980年代にかけてのアメリカでのオークションを通じて、このシングル盤を落札した方を知っている程度とのことでした。
資料09によれば、キングレコードから発売された「ジョン・コルトレーンの遺産」(SR-3026-8)というベスト物の付録として、国内発売されたことがあるようです。1969年の発売のようです。このベスト3枚組が何セット発売されたかは不明ですが、長らく日本ではこれを購入した方だけが、この演奏に触れられたのでした。
CDの時代になり、1998年にGRP傘下のインパルス!からCD8枚組の「The Classic Quartet – Complete Impulse! Studio Recordings」が発売され、この曲が再び世に登場しました。私もこのCD箱物で、この曲を聴くことができたのでした。
【エピソード、本セッション、シングル盤専用】
プレスティッジの時代からアトランティックの時代にかけて、何枚ものコルトレーンの演奏がシングル盤で発売されてきた。しかしそれらは、いわゆるシングルカットされたものだ。シングル盤制作のために設けられたセッションは、私の知る限りでこのセッションだけである。
これはプロデューサーのボブ・シールの戦略だったのであろう。設立されたばかりのインパルス!、その重要看板であるコルトレーンを更に広くジャズ・ファンに広めるために、またジャズに強い感心がない人にも広げるためには、ラジオ局で放送されることが必須だとシールは考えたはずだ。そうするとシングル盤が必要となり、いろんな曲が立て続けに流れるラジオにおいて、瞬間で聴取者の琴線に触れる演奏をシールは目指したと思う。
そう考えると多くのテイクを重ねた「Greensleeves」の中で、シンプルにストレートにこのメロディの良さを伝える演奏で、かつ3分少しの演奏のこのテイクが採用されたのかと思う。
このシールの考えがコルトレーンが全て納得したのかについては、私が接したいくつもの資料では触れていない。これからもコルトレーンの新たな資料が、世に出てくることであろう。いつの日か、この点についての証言に接したいものだ。
初収録はシングル盤(規格番号45-303)
【ついでにフォト】
2008年 みなとみらい、今のマークイズの場所での催し
(2021年2月14日掲載)