19611221-03050610

Greensleeves
(Traditional from England)



【この曲、この演奏】
 コンサートでのコルトレーンのこの重要曲ですが、この日の録音は唯一のカルテットでの正式スタジオ録音となります。

 コルトレーンのインパルス!での初セッション、アフリカ/ブラスのセッションではドルフィー入りの大編成でこの曲を録音しました。13回ものテイクを重ね、二つのテイクが世に出ました。それから半年後の11月頭に、カルテット+ドルフィーでヴィレッジ・ヴァンガードに出演し、この曲を2度演奏し、それらは1970年代後半に世に出ました。

 そしてそれから1ヶ月半後に本セッションとなりました。11回とテイクを重ね、演奏しきったのは5つのテイクとなりました。シングル盤で採用されたテイク7以外は長年に渡りその存在が知られていませんでしたが、2002年に世に出ました。それはヴァーヴ傘下となったインパルス!からのもので、名作アルバム「バラッズ」のデラックス版CD2枚組に含めての発売でした。ここではその4テイクについて、コルトレーンとマッコイ・タイナーの演奏に簡単にコメントし、またベース奏者は誰なのかについて、私の当てずっぽうを述べます。どのテイクもベースから入り、コルトレーンのテーマとアドリブ、マッコイのピアノ、コルトレーンのアドリブから後テーマ、そしてエンディングとの流れです。

-03 Greensleeves (take 3) (4分27秒)
 コルトレーンはテーマを吹く場面でいきなり崩していき、続くアドリブでも戸惑いを感じさせるものです。マッコイのテーマ・アドリブ・テーマとの流れは、この曲の持つ美をうまく表現しています。ベースは最初のシンプルで力強い演奏から、ワークマンだと思いました。

-05 Greensleeves (take 5) (3分47秒)
 テーマを吹くコルトレーンにはまだまだ迷いを感じます。マッコイのピアノにも、コルトレーンから感染したのか、迷いがあります。ベースは先テイクと同様にワークマンと思います。

-06 Greensleeves (take 6) (3分44秒)
 コルトレーンのテーマとアドリブは、ストレートにこの曲の良さを伝えるものとなっています。マッコイのピアノのアドリブに、少しの不満を感じます。ベースはコード弾きを入れての出だしで、ギャリソンかなと思いました。この演奏がこの後のテイク7、本テイクへ繋がって行きます。

-10 Greensleeves (take 10) (4分18秒)
 本テイクの後の演奏です。コルトレーンは出だしこそ良いものの、次第に前のテイクの方が良いやとの思っていったかのような、散漫さを感じるところがあります。マッコイのピアノは再びテーマ・アドリブ・テーマとなり、無難な演奏となっています。ベースはワークマンに戻っているようです。




【エピソード、本セッション、ベースは誰なのか】
 1961年のコルトレーンのリーダー活動は、5月のインパルス!初録音とアトランティックの最後の録音、すなわちアフリカ/ブラスとオレから始まり、11月のコルトレーン入りでのヴィレッジ・ヴァンガードへと続き、そしてこのメンバーでの欧州楽旅へと続いた。

 そして、年末にインパルス!でのスタジオ作業に戻った。コルトレーン・カルテットでのスタジオ録音という意味では、レジー・ワークマンがこの日が最後となる。資料06でも09でも、このセッションのベース奏者は、レジー・ワークマンとなっている。

 しかしながら、1998年に発売された、インパルス!での黄金カルテットのスタジオ録音をCD8枚組の「The Classic Quartet – Complete Impulse! Studio Recordings」でも、2002年発売のCD2枚組の「Ballads (Deluxe Edition)」でも、この日のベース奏者はジミー・ギャリソンとなっている。

 また資料07によれば、この日のスタジオには両者が参加しており、曲ごとにそれぞれが弾いていたのであろうとしている。また上記のCD2セットは、前者がGRPからの発売、後者がVerveからの発売であり、その調査に関しては限界があったと思う。
結局は誰も明確にこの曲ではこのベース奏者と言えない、というのが現状だと思う。

初収録アルバム

【ついでにフォト】

2008年 みなとみらい、今の象の鼻パーク、ターンテーブル

(2021年2月13日掲載)