19611120-01

Delilah
(Victor Young)
(11分33秒)



【この曲、この演奏】
 ヴィクター・ヤング作のこの曲を、最初に演奏しました

 また資料07によれば、コルトレーンの演奏記録は、この日だけです。

 ドルフィーはバス・クラリネットで演奏しています。

この悲しげな曲を、コルトレーンは丁寧に演奏していきます。しかし1分過ぎからアドリブ・パートに入ると、少々雑にも感じる攻め立てる演奏になっていきます。演奏が始まって3分46秒からドルフィーのバス・クラが登場します。こちらは刺激的なドルフィーの魅力が詰まった、2分半の演奏です。ソロはマッコイの2分半へと続き、再びソプラノのコルトレーンが攻撃的な演奏を1分40秒行い、無理矢理のようにテーマに移り、演奏は終わっていきます。
 

 私の想像(妄想)ですが、コルトレーンがコペンハーゲンの夜の1曲目にこの曲を演奏した理由は、次のようなことかと思います。

 このガレスピーとコルトレーンの欧州ツアーはノーマン・グランツが仕切っているが、各コンサートはその国の興行主に売っていたのであろう。このデンマークの興行主は、エマーシーから発売されているアルバム「Clifford Brown And Max Roach」を愛聴しており、その中でも「Delilah」が大好きであった。しかし、なかなか他のミュージシャンのこの曲の演奏を聴けない。そこで興行主は開演前にグランツに、この曲をこの夜のコンサートで演奏するよう頼んのであった。
 興行の世界に長らく携わっているグランツは、地元の興行主の大切さを肌で感じていた。これはどうしても実現させたい頼みだが、ガレスピーのレパートリーにこの曲が無いのは百も承知だったので、コルトレーンに頼むしかなかった。
 コルトレーンにしてみれば面白くない注文だが、ショー・ビジネスの世界にいるコルトレーンにはグランツの顔を潰すのも気が引けたことであろう。そしてグランツはコルトレーンに何らかのことを取引として持ちかけたのであろう。ホテルの部屋にスウィートポテトパイを差し入れる、或いは他の何かを部屋に、との話だ。
 コルトレーンはこれで手を打つことし、この日の最初に演奏されたのであった。
(あくまで妄想)




【エピソード、本セッション】
 連続22日間の欧州ツアーの中で、10日目のスタージがデンマークのコペンハーゲンで行われた。
 英国での7日間10ステージを終え、8日目はフランスのパリで1日2回の公演を行い、そして9日目にはオランダで場所違い(ScheveningenとAmsterdam)2回公演を行った。その翌日の10日目がこのデンマークだった。ハードスケジュールの様子が伺える日程だ。

初収録アルバム

【ついでにフォト】

2010年 タイプーサム、ペナン、マレーシア

(2022年7月30日掲載)