Miles’ Mode
(John Coltrane)
(10分21秒)
【この曲、この演奏】
スピード感が命のこの曲は、「The Red Planet」や「Trane’s Mode」との曲名も使われている、コルトレーン作のものです。
コルトレーンの演奏記録としては、この日と三日目に演奏されています。ただしどの二つは、1979年と1997年に世に出たものです。この曲はやはり、1962年6月20日にスタジオ録音され、その年の8月に発売された A(S)-21(Coltrane)に収録されている演奏が、有名なものです。
資料07によれば、この年の11月の欧州楽旅と1962年2月のショウボートでのライブに演奏記録があります。
John Coltrane(ts)
Eric Dolphy(as)
McCoy Tyner(p)
Jimmy Garrison(b)
Reggie Workman(b)
Elvin Jones(d)
資料07によれば上記のメンバーで、つまりベースは二本となっています。ただしインパルス!の資料では、ここでの演奏にジミー・ギャリソンの参加していないとなっています。
さて演奏ですが、全員一丸で出だし快調のテーマであり、コルトレーン、ドルフィー、そしてマッコイと続く、それぞれ3分弱のソロも高速感満載の演奏です。しかしながら、迷っているような部分も感じます。
ここでの演奏は1979年に世に出ました。
【エピソード、このライブの録音技師ヴァン・ゲルダー】
このヴィレッジ・ヴァンガードのライブ録音について書かれていることを、各資料から紹介します。
資料01
ヴァン・ゲルダーは、ツー・トラックのレコーダーを一台とマイクを数本持って来ていた。そしてエネルギッシュに動いていた。髪の毛が顔にかかるのもかまわず、身軽に動き回っていた。彼はトレーンがステージの上を動くのを追いかけ、二、三分おきにマイクの位置を変え、バンドの音がちゃんと収録されるよう気を配っていたのである。
資料05
録音技師にはヴァン・ゲルダーを起用、狭いステージに一二本のマイクロフォンをずらりと並べ、一音も漏らさず収録する盤石の態勢をととのえた。
資料13
会場内はスタジオの完璧な録音環境には劣り、ヴァン・ゲルダーいわく、それは「地獄の夕べ」であった。彼は笑いながらこう振り返る。
中は煙草の煙がもうもうと立ち込め、人でいっぱいであった。僕はステージ近くのテーブルを二つ占領したんで、クラブ側の不興を買っていた。当時は録音用の貸出機材などなくて、自分で持っていったミキシング・コンソールとテープ・デッキをすぐ横に置いたんだ。今ではちょっと外に出れば手に入るようなものでも、あの頃はなかった。ヘッドフォンも何とか見つけたくらいなんだからね。空港で使われているようなやつさ。クラブ内の雑音を締め出しコルトレーンの音楽を聴くためだ。しかし、あれこそコルトレーンの真骨頂だったね。とても濃密で激しい音楽なんだ。
【ついでにフォト】
2008年 みなとみらい
(2021年1月16日掲載)