Blues To You
(John Coltrane)
(6分28秒)
【この曲、この演奏】
1962年7月にアルバム1382(Coltrane Plays The Blues)で発売となったこのテイクは、「Blues To Elvin」同様にこのセッションでの最後のテイクです。またエルヴィンのドラムに力強さが増したテイクです。コルトレーンのテナーにはインパルス期の深みはまだ感じられませんが、それに向かっている様子がうかがえる内容です。
【エピソード、コルトレーンとネイマとハープ その2】
ときおり、ジータがクラシックのハープ奏者を連れて来た。その男はシンフォニーの抜粋曲を何曲か弾いてみせてくれた。ジョンは腰をかけてうっとりとしたような眼でその演奏を眺めながら、しきりとうなずくように頭を動かした。演奏が終わると、彼はずるそうな笑いを浮かべながらネイーマに言った。「あんなふうにハープを弾けたらいいと思わないか」
彼はまた、テレビガイドに眼を通してマルクス兄弟の映画を放映するかどうかを調べるのがいつもの習慣だった。その映画が放映される日は、ちゃんと時間までに家に帰って映画を夢中になって見た。そして、ハーポのハープ演奏場面になると音量を上げ、床の上にすわってヨガの姿勢をとって映画に全神経を集中した。ハーポのすぐれた演奏が終わると、部屋の隅にあるハープをあこがれの眼で見てから妻に向かって言った。「ハーポの演奏はすばらしい、そう思わないか」
「私には弾けないのよ、わかっているじゃない」ネイーマは言った。そして口を開けて、わざと怒って歯ぎしりをしてみせて言った。「でも、話をすることができるし、歯だって立派にあるわよ」
ジョンはずばり自分の急所をついた彼女の言葉を耳にして、静かに笑った。彼はネイーマが勧める歯医者のところにいって、君の歯は腐りかかった木のようなものだから早く抜いた方がいいと言われた。そこで彼は決心してその医者の処置に任せた。痛いのを我慢して何回か歯医者通いを続けた。そのおかげで、ようやく新しい義歯が入ったばかりなのだ。(資料01)
【ついでにフォト】
2005年 香港
(2020年9月9日掲載)