Exotica
(John Coltrane)
(6分8秒)
【この曲、この演奏】
I Can’t Get Started (Ira Gershwin – Vernon Duke)というスタンダードがあります。邦題「言い出しかねて」で有名なこのスタンダードについて、資料14より紹介します。
1937年に公開されたレビュー「ジーグフィールド・フォリーズ・オブ1936」のためにアイラ・ガーシュインとバーノン・デュークのコンビが書き下ろした曲で、レビューに主演した人気者のボブ・ホープが歌ったものの、当初はヒットしなかった。しかし翌年になって白人トランペッターのバニー・ベリガンがRCAでレコード化したところ、この演奏がヒットしてポピュラーな1曲となる。
この後にシナトラやカーメン・マクレエの歌、クリフォード・ブラウンやロリンズの演奏などで、ジャズファンの心を捉えていった曲です。
コルトレーンの演奏記録はこの1960年6月10日のジャズ・ギャラリーだけのようであり、2011年にブートレグCD発売された2枚組に「I Can’t Get Started」との曲名で収録されています。
しかし資料07ではこの曲をコルトレーン作の「Exotica」としています。「”Exotica” is Coltrane’s arrangement of “I Can’t Get Started”; in this early version, the bridge is close to that pf the original」とのことです。
このサイトでは資料07指摘の通りに「Exotica」との曲名としました。
さてジャズ・ギャラリーでの演奏ですが、収録は途中で終わっています。コルトレーンがソプラノ・サックスで演奏を始め、4分半強吹いた後に、マッコイのソロとなり、1分20秒ほどで収録が終わっています。
その演奏ですがの面影がありながら、コルトレーンの世界になっています。有名曲から自分の曲に発展させていくことはジャズ界によくあることです。コルトレーンの「I Can’t Get Started」からのそんな取り組みの初期段階がここにあり、そう考えると興味深いものです。
【エピソード、ノルウェーのジャーナリスト、ランディ・ハルティンの著書から その9】
私はコルトレーンと充実の時間を過ごした。彼は心を開いて、温かいユーモア・センスを披露してくれた。とても楽しそうにしていた。ゲストブックに一言をお願いすると、コルトレーンはページをめくって他のゲストの書き込みにざっと目を通した。
「お好きな曲の何小節か書いてもらえますか?」と私は頼んだ。
「いいとも」。そう言って書き始めたのは「ナイーマ」のイントロだった。コルトレーンが、最初の奥さんのために書いた曲だ。
ランディ・ハルティン著「Born Under The Sign Of Jazz(ジャズの星の下に生まれて)」(London: Sanctuary, 1998, 2000)’ 157-162ページより (資料04)
【ついでにフォト】
2012年 ペナン、マレーシア
(2023年3月26日掲載)