19581013-03

Like Someone in Love
(Burke – Van Heusen)
(8分6秒)



【この曲、この演奏】
 コルトレーンのこのスタンダードといえば、1957年8月16日のプレスティッジでのセッション、コルトレーンにとっての二度目のリーダー・セッションでトリオで演奏され、それはアルバム「ラッシュ・ライフ」に収録されています。コルトレーンのこの曲の演奏記録は資料07によれば、それとこのセシルとのセッションの二度だけのようです。

 さて演奏ですが、テーマをコルトレーンからドーハムへと続く中で、曲自体を大切にした演奏となっています。そのままドーハムのソロとなり、歌心に感心する演奏を披露しています。バックでのセシルは、まぁ 無難に演奏しておこうかな、との感じがする演奏です。

 そしてコルトレーンのソロとなり、ドーハムとの個性の違いの中で、演奏の流れを活かしております。そしてバックのセシルですが、何かを仕掛けようとするがその頃合いを見つけられないままと感じるような演奏です。

 次にセシルのソロとなります。私としては、頭がキレそうだがなんとか平静を保っているセシルの姿が伝わる演奏と感じました。

 ベースのソロがあり、テーマとなって、3曲目の演奏が終わっていきます。




【エピソード、このセッションの評判】
 資料09には次のようにある。
 コルトレーンとセシル・テイラーの共演といえば前衛ファンならば思わず食指が動かされると思うが、結論から言えば両者のコンセプトは相当にかけ離れている。加えるにサイドのドーハムがまったくのハード・バッパーであるので3者の食い違いは決定的だ。

 また私が持っている2000年発売国内版CDでの大村幸則氏の封入解説には、次のようにある。
 それまで共演したことのなかったメンバーを集めたレコーディングだったことが興味を呼ぶ。さらに言えば、この後もセシルは自らの音楽を完璧に表現するためにしか他のミュージシャンと共演することはなく、多分意に沿わなかったであろうこのアルバムのパーソネルは、セシルのこれまでのレコーディング歴の中で唯一の例外と言っても過言ではない。


 前者はメンバーがバラバラの演奏、後者はセシルが望んだセッションではなかったとのものだ。そしてここでの演奏を聴けば、両者の言わんとしていることは、その通りと納得できるものである。

 この作品を新譜として購入された方々にとっては、歯痒い作品を購入してしまったとの思いであろう。しかし多くの方々は、コルトレーンの死後にこの作品に触れたことであろう。私を含めてそんな方々にとっては、コルトレーンがセシルと共演した、まずはこれだけでも有難いものである。さらに贅沢を言えば、1966年から翌年春までの中でこの二人が共演していればとの思いが残る。

収録アルバム

【ついでにフォト】

2013年 みなとみらい

(2022年6月17日掲載)