On Green Dolphin Street
(N. Washington – D. Fields)
(9分46秒)
【この曲、この演奏】
この曲は、英仏海峡に面したイギリスの小さな港町での恋物語を描いた同名映画(1947年)の主題歌です。マイルスのここでの演奏で有名な曲ですが、ウィントン・ケリーやアルバート・アイラーの演奏など、多くのミュージシャンが取り上げている曲です。(資料09)
コルトレーンのこの曲のスタジオ録音は本セッションだけです。コルトレーンが参加したマイルス・バンドの1960年春の欧州ツアーでは何度もこの曲が演奏されており、そのいくつかはブートレグで聴くことができます。
さて演奏ですが、エヴァンスの美しいピアノでメロディを奏でた後に、マイルスのミュート・トランペットが登場し、演奏が本格的に始まります。ここでのマイルスの曲の解釈とその演奏の緊張感は、3分ほど続きます。
その後にコルトレーンのソロとなりますが、マイルスの演奏を受けてメロディを大切にした、どっしりと構えたソロを披露しています。
それに続くアダレイのソロは、2月3月のそれとは違う、流暢な語り口の演奏となっています。
エヴァンスのソロがあり、再びマイルスが登場して貫禄のミュート・トランペットを披露して、演奏は終わっていきます。
【エピソード、本セッションについて】
1958年に入り、コルトレーンを再雇用したマイルスは、先ずはアルバム「マイルストーンズ」用のセッションを、2月と3月に行った。その次のスタジオ・セッションがこの5月26日のものであるが、メンバーを入れ替えている。
ピアノはガーランドからビル・エヴァンスに、そしてドラムスはフィリー・ジョーからジミー・コブとなった。
ジャズ界の巨星ピアニストのエヴァンスは、この時期には多忙な活動を行なっていたが、それはサイドマンとしてのものであった。リーダー作は残していたものの、有名とは言えない存在であった。そんな時のエヴァンスに目をつけたマイルス、遡ればこの三年前に無名コルトレーンに目をつけたマイルス、ミュージシャンを見抜く力も超一流の方なのだ。
【ついでにフォト】
2010年 みなとみらい
(2022年4月30日掲載)