Black Pearls
(John Coltrane)
(13分12秒)
【この曲、この演奏】
コルトレーン作のこの曲、自身の演奏記録は本セッションだけです。
全員が売れっ子ミュージシャンで連日お疲れなのでしょうけれど、集中力を持って演奏している姿は流石であります。この曲でも躍動感ある演奏を繰り広げています。
しかしながら、今までとは違うものを感じます。定食屋さんで例えるならば、どんな注文でも主菜・副菜・主食・汁が絶妙なバランスであったのが、ここでは主菜の存在が強くなり過ぎているように感じます。
資料11 には、「コルトレーンのソロは、彼が当時差し掛かっていた一つのターニング・ポイントを映し出すもの。ソロはかなり早くから、彼は、同時代のサックス奏者でこれだけ持続できる人はまずいないような、延々連なる16音符の走句にはまりこんでいる。このテンポにおいて、ハーモニーのはっきりと見える彼の“ヴァーティカル”なラインは、よく言えば興奮的だが、場合によっては狂気すら感じさせないこともない」とあります。
また資料09には、「コルトレーンのソロは、いつになくアグレッシヴでありアルペジオもスムーズさを欠いている。(中略)特にソロの最後の部分で見せる同じようなフレーズの繰り返しはコルトレーンのいらつきを表しているようだが、音楽的な必然性は感じられない」とあります。
いづれにしても、ここでのコルトレーンは転換期と言えるのでしょう。
【エピソード、このセッション】
レッド・ガーランドとドナルド・バード、コルトレーンがプレスティッジで共演を重ねてきたメンバーだが、この3人での演奏は本セッションが最後となる。ベースにはポール・チェンバース、ドラムスにはアート・テイラーと、これまた顔馴染みのメンバーである。資料6によると、一部のアルバム、そしてディスコグラフィーでは、ドラムスをジミー・コブとしているとのことだ。
このセッションでの3曲でアルバム「ブラック・パールス」となるのだが、これが世に出たのはウィキペディアによれば1964年8月のことである。
本セッション、すなわちアルバム「ブラック・パールス」が高い注目を浴びていると言い難いのは、この発売時期も理由の一つであろう。もう一つの理由は演奏内容と言えるが、それは各曲で述べていく。
【ついでにフォト】
2005年 香港
(2020年2月4日掲載)