19580304-01

Sid’s Ahead
(Miles Davis)
(12分58秒)



【この曲、この演奏】
 マイルス作となっているこの曲ですが、資料07や資料09ではこの曲は「Walkin’」にそっくりな曲と指摘しています。「Walkin’」ならば作者は R. Carpenter です。

 この曲名での演奏はマイルスもコルトレーンも、このセッションの他には、この年のライブで数回の演奏があるだけです。(資料07、08)

 また資料09にこの演奏について、「ガーランドがこの曲の録音に遅れてきた為コルトレーンとアダレイのバックで不明瞭なハーモニーをつけるピアノはマイルスであるという」とあります。

 さて演奏ですが、黒い影に覆われていくような気分になるテーマでの三管のアンサンブルが、印象的なテーマとなっています。ソロはコルトレーン、マイルス、アダレイ、そしてチェンバースと、長尺の演奏を行なっています。コルトレーンとマイルスのそれは、テーマでの黒い影を感じさせる深みのある演奏です。アダレイのソロも良いのですが、間を持て余す様子を感じさせる場面があるのが、残艶な点です。マイルスとフィリー・ジョーの八小節交換があり、テーマへとなり、演奏は終わります。

 曲自体は「Walkin’」なのですが、マイルスの他での演奏とは空気感が違う演奏です。この辺りが、別の曲名にした理由なのかと感いました。

 この演奏はアルバム「Milestones…. Miles Davis」への収録となりました。




【エピソード、本セッション】
 アルバム「Milestones…. Miles Davis」制作のための2回目のセッションであり、2月4日との二日間でこのアルバムをマイルスは完成させている。

 この2回の間の2月7日にコルトレーンは、初のワン・ホーン・カルテットでのリーダー作「ソウルトレーン」の録音をおこなっている。このコルトレーンのレコーディングの流れを見ると、彼がいかに波に乗っているかが分かる。

 モード手法へのアプローチについて、資料09に次のコルトレーンの発言がある。

 「このアプローチだと、ソロイストはコーダル(垂直)な演奏とメロディアス(水平)な演奏のどちらを選んでもいいことになる。マイルスの音楽は私にめいっぱい自由を与えてくれた」

初収録アルバム

【ついでにフォト】

2008年 みなとみらい

(2022年4月13日掲載)