The Real McCoy
(Mal Waldron)
(8分34秒)
【この曲、この演奏】
シド・マッコイというディスク・ジョッキーに捧げてマルが作った、アップ・テンポのリフ・ブルースです。(資料09)
この曲の演奏記録はコルトレーンもマルも、本セッションだけです。(資料06,08)
全員参加のこの曲では、ジャム・セッションの楽しさを味わえる演奏で、アモンズの存在感がいきているのと、リチャードソンのフルートが効果的にアレンジされているのが印象的です。この2点については、ここまでの出だし3曲に共通して言えることであり、更に5管の重なりの妙も楽しめ、この意味ではアモンズの狙いとマルの仕事が生きていると言えます。
【エピソード、このセッションのコルトレーンについて】
1957年の春にヤク断ち酒断ちして、快進撃の波に乗ったコルトレーンなのだが、資料01にはペッパー・アダムスの次にような証言がある。
ジョンは麻薬を打って酒を飲むという不摂生をしていたので、よく胃痛に悩まされていた。ジーン・アモンズの仕事で彼と一緒にレコーディングをやった時のことだが、ミュージシャンたちは全員プレスティッジの事務所に集合して、ルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオへ行く車を待っていた。ジョンは胃の具合が悪くなり、何かいい治療法がないかと片っ端から仲間に問てまわっていた。ブリオッシュ(卵とバター入りのロールパン)がいい、いやアルカ・セルツァーを飲まなきゃだめだという者もいたし、ビタースが一番だとすすめる者もあった。ジョンは私のところにも来たので「今日の仕事は、大変なレコーディングだから、今言われたのを全部試した方がいいぜ」と冗談半分に答えた。結局、彼はネイマからもらった果物を少し食べただけで、誰の意見も信用しなかったのだ。
このアダムスの話は胃痛を中心にしたものだが、コルトレーンがこの時にも薬と酒に頼っていたかのような記述があるし、その時期はアモンズのレコーディングなので、1958年1月しかない。
この辺りの話の真意は確かめようもないが、一つの話としてここに書いておく。
【ついでにフォト】
2008年 横浜、野毛
(2019年11月7日掲載)