19570920-04

Wheelin’
(Mal Waldron)
(11分22秒)



【この曲、この演奏】
 この曲も別テイクが収録されました。

 資料09には、「クィニシェットの最初の3コーラスのソロの頭で、ベイシー楽団で活躍したエド・ルイス(tp)のソロが引用されている」とあります。

 資料06には、「コルトレーンとワトキンスのソロ・チェイスの間に、明らかなテープカットがある」と書かれています。

 「クィニシェットの引用」についてはその元を知らないのでコメントできませんが、演奏自体はリラックス感たっぷりのものです。他のテナー二人も同様である中で、熱気あふれる演奏をしているのはマルであります。マル独特のスタイルが気炎を上げていく様では、高揚感あふれるものです。

 「明らかなテープカット」ですが、最初のテイクと同様にテナー三人でのエンディングとなった後に、ドラムの音が残っています。これからしたらドラムがトチってしまった部分をカットしたのかと思いますが、資料06の記述は違うもの。私にとっては分からないままの記述です。

 さて「Dealin’」と「Wheelin’」それぞれで2つのテイクを本セッションでは演奏し、全てがレコードとして世に出ました。こうして聴いてみると、「ではもう一度、リラックスした演奏を」との意味だったのかと思います。とするならば「Wheelin’」でその意図が生かされております。




【エピソード、歯痛のまま演奏】
 歯痛のコルトレーンは死ぬ思いで、ボスのクリーンヘッドのバンドで演奏した。ボスとの楽器交換などの演出は避けていたが、ボスはコルトレーンの異変に気がついた。コルトレーンにバーボンを渡し、明朝に歯医者に行くように言い、ホテルで別れた。

 痛みを忘れるためにバーボンを飲み続けたコルトレーンだったがほとんど寝れず、結局寝坊してしまった。そしてすぐに勇気を振り絞って歯医者に行き、奥歯を2本抜かれた。さらにバンドは先に次の目的地に行ってしまい、後を追ったコルトレーンだが間に合わず、その晩は穴を開けてしまった。しかしボスのクリーンヘッドはコルトレーンの姿を見てホッとした。この若いミュージシャンに何かあってはならないと、心配していたからだ。

 後年にクリーンヘッドはコルトレーンについて次にように語った。「ジョンはとてもいい青年だった。私はジョンを自分の息子だと思っていた」(資料01)

【ついでにフォト】

2009年 みなとみらい

(2019年9月28日掲載)