The Way You Look Tonight
(Fields – Kern)
(8分25秒)
【この曲、この演奏】
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースというミュージカル映画界のドル箱コンビの、第6作目の1936年映画「有頂天時代」で使われたのが、この「The Way You Look Tonight」で、「今宵の君は」という素敵な邦題で日本で知られています。ジャズマンに愛されているこのスタンダード曲は、ゲッツやマクリーン、ペッパーやドルフィーといったように幅広いミュージシャンの好演が残っています。(資料14)
コルトレーンがこの曲を演奏した記録は、本セッションの1ヶ月前のブルー・ノートでのグリフィンのセッションのがあり、計2回のスタジオ録音が残っています。(資料06)
「いつの日か、私が失意に沈み、まわりが冷たくなったとき、今宵のあなたの様子を思うだけで、私の心は暖かくなる」という詩なのですが(資料15)、流石はアカデミー主題歌賞を獲得した曲だけあって、心に希望が持てるようになり暖かくなっていく状況が伝わってくる、そんな場面が想像できる曲です。
アップテンポでのこの曲の演奏は、何と言ってもマルのアレンジの妙が光っていることです。この曲を活かすように、シンプルながら3管の豊かな重なりを表現するアレンジになっています。シハブ、シュリーマンの後を受けてのコルトレーンのソロは、ハーモニーを活かす演奏という意味で、着実な成長を感じるものになっています。
【エピソード、この日のセッション】
この日は二つのセッションが収録された。
一つはマル・ウォルドロンのリーダーセッションで、アイドリース・シュリーマン(tp)とサヒブ・シハブ(bs,as)を入れた3管編成のシクステットで3曲収録された。この3曲と4月19日のセッションからの3曲で、「Mal 2」として発売された。
もう一つのセッションはポール・副大統領・クィニシェットを加えてのセッションであった。前半セッションから2管が抜け、リズム人はそのままでのカルテット編成で6曲収録された。そのうちから5曲を選び、録音から2年半後に「Cattin’ With Coltrane And Quinichette」として発売された。ちなみに残りの1曲は後年のCD化の際に、追加収録となった。(以上資料06、Wikipedia)
私見で言うと、録音当時の人気具合からすれば、プレスティッジはクィニシェットのリーダー作と考えていたと思う。しかしレコード化の際の状況から、コルトレーンとの双頭となり、さらにコルトレーンの名前が最初となったのだと思う。
【ついでにフォト】
2005年 香港
(2019年6月27日掲載)