Dear Old Stockholm (take 6)
(Traditional)
(6分38秒)
【この曲、この演奏】
このセッションの冒頭で演奏されたこの曲は5つのテイクを残しました。二つ目のテイクが結局は本テイクとなったので、マイルスも手応えある演奏だったのでしょう。その後に「Bye Bye Blackbird」と「Tadd’s Delight」を演奏し、それぞれ手応えある演奏を録音し、本来ならばこれでこの日のお仕事は終わりとなるのですが、何とセッション冒頭に演奏した「Dear Old Stockholm」をこのセッション最後に再び(6回目)演奏しました。
その演奏ですが、テイク2よりもやたらとテンポを早めた演奏です。ソロ順などの構成は同じですが、この曲の持ち味を生かせている演奏とは言えません。コルトレーンのソロについては、前半はボロボロの内容で、マイルスから止められたしても当然のものです。しかし後半に入ると別人のような演奏を、コルトレーンは披露しています。きっとマイルスからの厳しい視線で我に帰ったコルトレーンが、スタジオにいたのであろうと想像しました。
この演奏は2000年になってから世に出ました。
【エピソード、1956年当時の様子、岩浪氏の思い出】
資料10に岩浪洋三氏が寄稿した「日本版 コルトレーン受容史」がある。そこから1956年当時の様子の箇所を紹介する。
日本でコルトレーンの演奏が入ったレコードがはじめて発売されたのは、一九五六年だったと思う。一九五五年に録音されたマイルス・デイヴィス・クインテットの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(CBS)は日本では最初数曲入りのEPで日本コロンビアから発売された。ぼくがまだ上京する前のこと、愛媛県の松山にいた頃で、そのレコード評を日本の音楽雑誌で読んだ記憶がある。当たりさわりのない批評もあったが、中に「マイルスのトランペットはいいが、サイドメンはみんなだめだ」という批評があり、このレコードの演奏全体に感銘を受けていただけに大きな不満を感じたのを憶えている。たしかに、一九五六年の時点ではマイルス・クインテットのサイドメンは、その当時はほとんど無名だったので、サイドメンが軽く無視されてしまったのも当然だったかもしれない。
【ついでにフォト】
2010年 ペナン、マレーシア
(2021年12月23日掲載)