19560605-06

Bye Bye Blackbird (take 1)
(M.Dixon – R.Henderson)
(7分48秒)




【この曲、この演奏】
 「コメディアンのエディ・キャンターやダンカン・シスターズが歌ってヒットした古い流行歌」であるこの曲は、マイルスがこのセッションで取り上げたことで、ジャズ界のスタンダードになりました。(資料14)

 コルトレーンがこの曲をスタジオで演奏したのは、本セッションだけです。しかしライブでは何度も演奏した曲で、マイルス・バンドでは1958年のライブで何度も演奏しており、1960年にも演奏記録が残っています。その中のいくつもの演奏がブートレグで聴くことができますが、1958年7月3日のニューポート・ジャズ祭での演奏は、公式発売されています。

 またコルトレーン自身のバンドでもこの曲を頻繁に取り上げており、特に1962年秋の欧州ツアーでは定番曲となっていました。こちらの演奏も、ブートレグで聴くことができます。

 このセッションでは3回演奏されています。その最初の演奏ですが、軽快なガーランドのピアノに続いて、マイルスのミュートでの演奏でテーマに入ります。陽気なこの曲の良さを緊張感の中で輝かせるマイルスの演奏です。そのままマイルスのソロに入り、この世界が一層と深まっていきます。その後にコルトレーンのソロとなるのですが、歌心の格の違いとの評もありますが、コルトレーンの個性が発揮され始めた良い演奏だと私には感じます。ガーランドのソロは宝石が輝くような演奏であり、後半のブロック・コードも聴きごたえあるものです。

 この演奏はボツ・テイクとなり、世に出たのは2000年のことでした。その理由はガーランドのソロが終わり、再びマイルスがミュートでテーマを吹く箇所にあるのかと、私は感じました。




【エピソード、録音スタジオ】
 コロンビアでのアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」向けセッションの最初となる、1955年10月26日の録音スタジオは「Columbia Studio D、799 7th Ave., borough of Manhattan」だった。

 二度目のこの日と三度目の1956年9月10日は「Columbia 30th Street Studio、borough of Manhattan」である。マンハッタンのど真ん中に二つのスタジオを構えていたコロンビア・レコードは、弱小レーベルひしめくジャズ・レコード界にあって、巨像のような存在だったのであろう。

 プレスティッジ時代のコルトレーンは、ヴァン・ゲルダー・スタジオでアット・ホームな中で数多くの演奏を行いながら、コロンビアのような大手でも演奏していた。アトランティックに移ってからはヴァン・ゲルダー・スタジオから離れたが、インパルス!に移ると、そのほとんどのスタジオ・セッションを再びヴァン・ゲルダー・スタジオで行った。

 インパルス!時代はABCパラマウント所有のスタジオを使えたはずであるが、コルトレーンはヴァン・ゲルダー・スタジオを選んでいた。

 スタジオ選びとの視点でコルトレーンの演奏活動を眺めても、いくつかのドラマがあったのであろう。

収録アルバム

【ついでにフォト】

2010年 ペナン、マレーシア

(2021年12月19日掲載)