Anatomy
(Mal Waldron)
(8分52秒)
【この曲、この演奏】
マルはこの年の3月22日のオールスターズ・セッションに続いて、マル作のこの曲を取り上げています。マルが気に入っていたからこそ続けて演奏したのでしょうけど、このお気に入りはこの時だけだったようで、資料08で調べた限りではマルはこの曲を更に取り上げることはありませんでした。
ミドル・テンポのこのマイナー・ブルースのソロの先頭は、コルトレーンの抑えながらも貫禄と重量感ある表現の演奏を披露しており、その進歩に驚きます。続くクィニシェットのソロは、コルトレーンに押されてしまったのか、自分のスタイルを崩していく感があります。マルのソロを挟んでコルトレーンとクィニシェットとの四小節交換などでの絡みがありますが、そこではコルトレーンがクィニシェットに寄り添うかのような演奏であります。
【エピソード、フィラデルフィアでのコルトレーン、1946年】
フィラデルフィアに戻ったコルトレーンは、オルガン・ドラム・サックスで編成されたカクテル・コンボにミュージシャンとして初めて雇われ、再びサックスを演奏するようになった。そんな時期のエピソードを、二人のジャズマンが語っている。
「私がジョンと知り合ったのは、彼がその年の夏にニュージャージー州のワイルドウッドにやってきたときのことである。出会った場所は、私が避暑用のボートを買った海辺の避暑地であった。週末になると、ジョンはフィラデルフィアの若いミュージシャン連中と一緒にやってきた。彼らは決まってパーカーのレコードを持って来て、私やここのローカル・ミュージシャンたちと音楽について何時間も論じあったものだった」ビル・バロン
「ハイスクール時代にカニンガムという名のアルト奏者と知り合った。ある日にカニンガムが、ジョン・コルトレーンという新顔が街にいるが普通じゃないアルト奏者だから一度会ってどんなやつか確かめた方が良い、と私に言った。私はテナーを吹いていたので一度会ってみようと答えたところ、ある日にカニンガムがコルトレーンを連れて私の家にきた。アルト・サックスを持って来たコルトレーンは早速それを手にして、私がかつて一度も聴いたことのないような豊かな絶妙な音で演奏した。それはジョニー・ホッジスより豊かな音量で、幅の広い音だった。彼の演奏があまりに素晴らしかったので、二度目に彼が来たとき、私の母親はもう一度吹いてほしいと頼んだほどであった」ベニー・ゴルソン
(以上は全て資料01から)
【ついでにフォト】
2006年 香港
(2019年7月1日掲載)